元書店員ですが、転生したら貴族令嬢になっていました!
15.あっという間に夜会の朝がやってきました!
それからの12日は、ひたすらにレッスン、レッスン、レッスン……。
気づいたら夜お風呂の中で寝落ちしかかっていたこともあった。使用人に頼んでお湯をいれてもらうスタイルなので、手早く入らないと湯の温度が落ちる。湯冷めする。違う、その前に溺死する。
凛音だったときの私は滅多に風邪もひかなかったし、本屋で筋トレもしていたから丈夫であったが、今はか弱いアリアナの身体なのだから無理は禁物だ。
毎夕レッスンが終わるころには疲れきっていて、自分で料理をする余力がないので昼も夜も塩味のご飯だが徐々にそれも気にならなくなってきた。しかし発掘した胡椒やハーブたちを後がけするのだけは忘れない。
朝食だけはと自分で作っていると、毎朝ふらりと兄がやってきて一緒に食べるのであった。騎士団の有休をもぎ取って帰ってきたという彼は、ダンスレッスンだけではなく、時間があるからと私のレッスンに付き合い、気づいた端から多岐に渡って色んなことを教えてくれるので、私のノートは真っ黒になっていった。
☆☆☆
いよいよ今夜は舞踏会!
さすがに今日はレッスンがないので時間には追われていないが、かなり緊張しながら朝食を作っていた。
今朝は鶏のスープを作るつもりで昨日から仕込んでおいた。鶏に塩胡椒とハーブをまぶして下準備しておいたものの丸焼きするのは料理人に頼んでおいて、焼きあがった鶏を昨夜遅くに厨房に忍び込んで、ノートで復習するがてら、寸胴鍋で白ワインと水、塩、生姜とニンニク(色んな食材を徐々に発見中)でコトコト煮込んでおきました。味を確かめたらこれだけでも美味しい! けど、野菜も一緒に入れてスープの完成。やたらに鶏料理が多いのはこの世界でも鶏は手に入りやすい食材だからだ。
本日はこのスープににんじんすりおろしドレッシングのサラダ、パンで朝ごはん。
「うわあ、もうすっごい良い匂いするね!」
寝起きの兄が私の作る朝食目当てでやってくるのも毎朝のことで恒例。
「うん、今日のは自分でも結構美味しくできたと思う」
兄は元の世界での私の年齢を聞いてからというもの、元々は年上なのだから二人の時は敬語をいらないし、名前に様もつけなくていいよと言ってくれるので、お言葉に甘えてそうさせてもらってる。おかげでぐっと距離が近づいて、仲の良い友達のようになった。
「「いただきまーす!」」
2人でいただきます、するのもスムーズだ。
「今日いよいよ舞踏会だね。緊張してる?」
「しないわけがない」
はぁ……と私はため息をついた。
「失敗する未来しか見えない」
「ぶは、でもまぁ俺もいるから大丈夫だよ。シュタイン家の兄弟とは昔から仲がいいし」
侯爵はエリックがもし私の貴族令嬢としての仕上がりがいまいちだと思ったら、シュタイン家の夜会に今回行くのはやめてもいいと思っていたらしいのだが、エリックが大丈夫でしょ、とゴーサインを出したので当初の予定通り、参加することとなった。
「侯爵も付き合いが深いって言ってたものね……てことは、アリアナのことも皆さんよくご存じなのでは?」
余計に入れ替わってるのがバレるよね!? と私がびくびくしながら震えると、うまいうまいうまーいとスープをかきこんでいた兄が、ぴたっと動きを止めた。
「いやそれが……言いにくいんだけど…アリアナはめちゃくちゃ疎まれていたから」
「えっ」
「アリアナってちょっとお高いっていうか……いや位は向こうの方が高いんだけど、昔からツンケンしてるし何考えてるか分からないから、向こうの兄弟うけも悪くてさ。特にヴィクターとはまともに喋ったことないと思う」
今はこうやって親しげに話してくれるエリックだが、彼自体もアリアナのことは苦手で、一緒の屋敷にいるのも耐え難く王宮の騎士団に入団したんだ、という話をこの前してくれたところなので、まぁさもありなん。
(人生イージーモードかと思ってたら、まさかのコミュ障だったのね、アリアナ)
「でもさすがにキャラ変わりすぎてたら、びっくりされない?」
「そうなんだよなぁ。君は面白いからなぁ、向こうの兄弟に是非紹介したいんんだけど。父上は勿論話す気はないんだろうけど、俺が君と親しく話している時点でバレると思うんだよなぁ。あの兄弟妹には話してもいいと思うけどね」
シュタイン公爵家は、ご当主と奥様、嫡男のアレクサンダー様、ヴィクトル様、シュザンナ様の3兄弟妹がいらっしゃるらしい。エリックはアレクとヴィクターと昔から気が合って仲良くしているが特にヴィクターとは親しいという。彼が信頼できる方々ならば、話してもいいとは思うのだが、とはいえ、当主である侯爵の意向にここは沿うべきだろう。
「エリック……今夜は……頼むね…」
スープをおかわりして戻ってきた兄にため息まじりに頼むと、任せて~と軽い返事が返ってきた。
マジ……頼む……兄……!
気づいたら夜お風呂の中で寝落ちしかかっていたこともあった。使用人に頼んでお湯をいれてもらうスタイルなので、手早く入らないと湯の温度が落ちる。湯冷めする。違う、その前に溺死する。
凛音だったときの私は滅多に風邪もひかなかったし、本屋で筋トレもしていたから丈夫であったが、今はか弱いアリアナの身体なのだから無理は禁物だ。
毎夕レッスンが終わるころには疲れきっていて、自分で料理をする余力がないので昼も夜も塩味のご飯だが徐々にそれも気にならなくなってきた。しかし発掘した胡椒やハーブたちを後がけするのだけは忘れない。
朝食だけはと自分で作っていると、毎朝ふらりと兄がやってきて一緒に食べるのであった。騎士団の有休をもぎ取って帰ってきたという彼は、ダンスレッスンだけではなく、時間があるからと私のレッスンに付き合い、気づいた端から多岐に渡って色んなことを教えてくれるので、私のノートは真っ黒になっていった。
☆☆☆
いよいよ今夜は舞踏会!
さすがに今日はレッスンがないので時間には追われていないが、かなり緊張しながら朝食を作っていた。
今朝は鶏のスープを作るつもりで昨日から仕込んでおいた。鶏に塩胡椒とハーブをまぶして下準備しておいたものの丸焼きするのは料理人に頼んでおいて、焼きあがった鶏を昨夜遅くに厨房に忍び込んで、ノートで復習するがてら、寸胴鍋で白ワインと水、塩、生姜とニンニク(色んな食材を徐々に発見中)でコトコト煮込んでおきました。味を確かめたらこれだけでも美味しい! けど、野菜も一緒に入れてスープの完成。やたらに鶏料理が多いのはこの世界でも鶏は手に入りやすい食材だからだ。
本日はこのスープににんじんすりおろしドレッシングのサラダ、パンで朝ごはん。
「うわあ、もうすっごい良い匂いするね!」
寝起きの兄が私の作る朝食目当てでやってくるのも毎朝のことで恒例。
「うん、今日のは自分でも結構美味しくできたと思う」
兄は元の世界での私の年齢を聞いてからというもの、元々は年上なのだから二人の時は敬語をいらないし、名前に様もつけなくていいよと言ってくれるので、お言葉に甘えてそうさせてもらってる。おかげでぐっと距離が近づいて、仲の良い友達のようになった。
「「いただきまーす!」」
2人でいただきます、するのもスムーズだ。
「今日いよいよ舞踏会だね。緊張してる?」
「しないわけがない」
はぁ……と私はため息をついた。
「失敗する未来しか見えない」
「ぶは、でもまぁ俺もいるから大丈夫だよ。シュタイン家の兄弟とは昔から仲がいいし」
侯爵はエリックがもし私の貴族令嬢としての仕上がりがいまいちだと思ったら、シュタイン家の夜会に今回行くのはやめてもいいと思っていたらしいのだが、エリックが大丈夫でしょ、とゴーサインを出したので当初の予定通り、参加することとなった。
「侯爵も付き合いが深いって言ってたものね……てことは、アリアナのことも皆さんよくご存じなのでは?」
余計に入れ替わってるのがバレるよね!? と私がびくびくしながら震えると、うまいうまいうまーいとスープをかきこんでいた兄が、ぴたっと動きを止めた。
「いやそれが……言いにくいんだけど…アリアナはめちゃくちゃ疎まれていたから」
「えっ」
「アリアナってちょっとお高いっていうか……いや位は向こうの方が高いんだけど、昔からツンケンしてるし何考えてるか分からないから、向こうの兄弟うけも悪くてさ。特にヴィクターとはまともに喋ったことないと思う」
今はこうやって親しげに話してくれるエリックだが、彼自体もアリアナのことは苦手で、一緒の屋敷にいるのも耐え難く王宮の騎士団に入団したんだ、という話をこの前してくれたところなので、まぁさもありなん。
(人生イージーモードかと思ってたら、まさかのコミュ障だったのね、アリアナ)
「でもさすがにキャラ変わりすぎてたら、びっくりされない?」
「そうなんだよなぁ。君は面白いからなぁ、向こうの兄弟に是非紹介したいんんだけど。父上は勿論話す気はないんだろうけど、俺が君と親しく話している時点でバレると思うんだよなぁ。あの兄弟妹には話してもいいと思うけどね」
シュタイン公爵家は、ご当主と奥様、嫡男のアレクサンダー様、ヴィクトル様、シュザンナ様の3兄弟妹がいらっしゃるらしい。エリックはアレクとヴィクターと昔から気が合って仲良くしているが特にヴィクターとは親しいという。彼が信頼できる方々ならば、話してもいいとは思うのだが、とはいえ、当主である侯爵の意向にここは沿うべきだろう。
「エリック……今夜は……頼むね…」
スープをおかわりして戻ってきた兄にため息まじりに頼むと、任せて~と軽い返事が返ってきた。
マジ……頼む……兄……!