元書店員ですが、転生したら貴族令嬢になっていました!
21.② MMK(モテてモテて困っちゃう)は大変ですね!
「アリアナ様」
ほっぺにそばかすが散った可愛らしい赤毛のご令嬢とつんとつました顔の金髪のご令嬢が2人で私の前にやってきた。まだまだ初々しい様子から察すると、十代なんだろうなぁ。
「ヴィクトル様とどういったご関係なのですか?」
(わ……ヴィクトル狙いなのかしら。勘違いされたらいやだなぁ)
「彼は私の兄の友人です」
そう答えると2人の顔がほっとほころんだ。つんとつました顔のご令嬢がにっこり笑って言う。
「そうですわよね、アリアナ様はヴィクトル様の好みから大きく外れていらっしゃいますもんね」
「ヴィクトル様が噂になるのはいつも―――大人の女性ですもの」
「アリアナ様が今更すり寄っても相手になんかされませんわ」
「そもそも傷がおありのアリアナ様にそんな資格ありませんよね?」
(なかなかはっきり言うわねぇ)
まぁ分かったことは、ヴィクトルはモテにモテて、浮名を死ぬほど流している、ということかな。でも正直それを聞かされた私の反応は「……で?」だ。
「ヴィクトル様、先ほどのエスコートも仕方なくされてたんでしょうしね」
「勘違いしないでいただきたいものですわね」
「ヴィクトル様が一人の女性に縛られることになったら私たち――」
「どうするんだい?」
令嬢たちの後ろからエリックが笑いをかみ殺しながら言った。
(さっきからずっと聞いてたよね―――性格悪)
先ほどから令嬢の向こう側に立っているエリックの姿は私から丸見えだったのだ。2人のご令嬢たちは、彼の姿に――エリックもモテモテの独身貴族男性だ――泡を食って、挨拶もそこそこに逃げ出した。
「ぶは、リンネすっごい顔で聞いてたね」
冷たい炭酸水の入ったグラスを渡してくれながらエリックは可笑しくて仕方ないという顔をしていた。あ、この炭酸水さっぱりして美味しい。あーほんとはスパークリングワイン飲みたい。でも一応(身体は)18歳だからお酒駄目なんですって。っていうかそれ以前に淑女は人前でがばがばお酒飲むものじゃないんですって。
「なんかね、過ぎ去った青春を思い出してたの」
アラサーの私にはもうこの子たちのような情熱はないなぁと、彼女たちのよく動く口を見ながら、私の意識は途中から異次元にとんでいた。
「ぐはは」
兄よ、笑いすぎ。涙をこぼしながら笑い転げている。
「ヴィクター、すっごい遊び人ってことになってるけど、あいつホントはむちゃくちゃ純情なんだよ――噂と真実のギャップがもうおかしくっておかしくって」
「はぁ…」
「リンネは勘違いしないであげてね」
「はぁ…」
この夜会を後にしたら私はもうヴィクトルに会うことはない―――とその時はそう思っていたからあまり深く考えず、頷いた。
ほっぺにそばかすが散った可愛らしい赤毛のご令嬢とつんとつました顔の金髪のご令嬢が2人で私の前にやってきた。まだまだ初々しい様子から察すると、十代なんだろうなぁ。
「ヴィクトル様とどういったご関係なのですか?」
(わ……ヴィクトル狙いなのかしら。勘違いされたらいやだなぁ)
「彼は私の兄の友人です」
そう答えると2人の顔がほっとほころんだ。つんとつました顔のご令嬢がにっこり笑って言う。
「そうですわよね、アリアナ様はヴィクトル様の好みから大きく外れていらっしゃいますもんね」
「ヴィクトル様が噂になるのはいつも―――大人の女性ですもの」
「アリアナ様が今更すり寄っても相手になんかされませんわ」
「そもそも傷がおありのアリアナ様にそんな資格ありませんよね?」
(なかなかはっきり言うわねぇ)
まぁ分かったことは、ヴィクトルはモテにモテて、浮名を死ぬほど流している、ということかな。でも正直それを聞かされた私の反応は「……で?」だ。
「ヴィクトル様、先ほどのエスコートも仕方なくされてたんでしょうしね」
「勘違いしないでいただきたいものですわね」
「ヴィクトル様が一人の女性に縛られることになったら私たち――」
「どうするんだい?」
令嬢たちの後ろからエリックが笑いをかみ殺しながら言った。
(さっきからずっと聞いてたよね―――性格悪)
先ほどから令嬢の向こう側に立っているエリックの姿は私から丸見えだったのだ。2人のご令嬢たちは、彼の姿に――エリックもモテモテの独身貴族男性だ――泡を食って、挨拶もそこそこに逃げ出した。
「ぶは、リンネすっごい顔で聞いてたね」
冷たい炭酸水の入ったグラスを渡してくれながらエリックは可笑しくて仕方ないという顔をしていた。あ、この炭酸水さっぱりして美味しい。あーほんとはスパークリングワイン飲みたい。でも一応(身体は)18歳だからお酒駄目なんですって。っていうかそれ以前に淑女は人前でがばがばお酒飲むものじゃないんですって。
「なんかね、過ぎ去った青春を思い出してたの」
アラサーの私にはもうこの子たちのような情熱はないなぁと、彼女たちのよく動く口を見ながら、私の意識は途中から異次元にとんでいた。
「ぐはは」
兄よ、笑いすぎ。涙をこぼしながら笑い転げている。
「ヴィクター、すっごい遊び人ってことになってるけど、あいつホントはむちゃくちゃ純情なんだよ――噂と真実のギャップがもうおかしくっておかしくって」
「はぁ…」
「リンネは勘違いしないであげてね」
「はぁ…」
この夜会を後にしたら私はもうヴィクトルに会うことはない―――とその時はそう思っていたからあまり深く考えず、頷いた。