元書店員ですが、転生したら貴族令嬢になっていました!

23.① 子供は可愛いのです!

 ハンデンバーグ家は、とてつもない豪華なつくりの家だった。

(家ってカラーが出るのね…)

 正直な感想を言えば、成金風なつくりというか……お金あります!ってところを見せつけるためのインテリアだったり、家だったりする気がした。シュワルツコフ家は質実剛健なイメージを与えるし、シュタイン家はそれはそれは豪華だがすべてが上品にまとめられていた。

 ハンデンバーグの次男は冷たい感じのする男で、醜聞まみれのアリアナにはそっけなく会釈をするだけだったし、長女と次女はアリアナそっちのけでずっとヴィクターに色目を使っている。ヴィクターがどれだけ冷たくあしらっても寄ってくるそのガッツは素晴らしい。私は彼の隣で遠い目をしていた。まったくもって興味なし。

 先に到着していた侯爵はハンデンバーグ侯爵と既にお互いの領地に関わる商談をしながら、ランチを取っているとのことだったので、私はヴィクターと共に軽いランチを頂くと――この家のサンドイッチはしかし美味しかった――アリアナに嫌味をいいながらもヴィクターにまとわりついてくるハンデンバーグ家の長女次女がただただ鬱陶しく、さすが有力公爵の息子らしく、男女問わずたくさんの人に囲まれているヴィクターに、隙をみて小声で行先を告げてから、一人で中庭に降りていった。私の今日の使命は、このお茶会に顔を出す、ということなので目的は果たした。

(庭もすごい勢いで成金趣味だなぁ。あの銅像ってハンデンバーグ侯爵? 生きてるのに銅像って作るもんなんだ…)

 庭には花がメインというよりは銅像、彫像、噴水が所狭しと並べられていて、笑えてくる。

 噴水前に金ぴかのベンチが設えてあったのでそこに腰をかける。

「ベンチが金ぴかである意味とは…」

 独り言を呟いて、空を見上げる。

 あぁ、空は日本と同じなのになー。私はこんな着たくもないドレスを着て、見ず知らずの貴族たちに囲まれて、まったく楽しくない会話を聞いて、時には意地悪を言われて、窮屈な思いをしないといけない。辛いなー。みんな元気かなー。普段なるべく考えないようにしているけど、やっぱり会いたいなー。

 こちらの世界でアリアナとして目覚めてしばらく経ち、最近はさすがにもう突然元の世界に戻れるかもと楽観的に考えることはできなかった。普段は忙しくしてなるべく考えないようにしているが、時々ふと一生このままなのかと考えてしまう。残りの人生をこの世界で生きる―ということを考える度、自分でも得体のしれない孤独と不確かさが私にひたひたと襲いかかってくるのを感じる。
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