元書店員ですが、転生したら貴族令嬢になっていました!
31.① 側にいさせてください!
真っ赤になった私をそれはもう愛しげな眼差しで見下ろすヴィクターにお手上げであったがそんな時間も今やすっかり楽しいのだから、私も彼のことを好きになっているに違いない恥ずかしいからあんまり考えたくないけど!
さて、もうすぐ侯爵家に到着する、というタイミングで彼が言った。
「三日後、王宮に行かなければならない」
仕事なんだ、と続ける。
彼が両家に私への求婚の意思を明らかにしてから既に数ヶ月経っているが、その間にも既に数回彼は王宮との行き来をしているのを知っている。王宮自体はここから馬車で数時間行ったところにあるらしく、頑張れば日帰りも可能だが、仕事となると毎回数日留守にするので今回もそうなのかなと思っていると、しばらく逡巡した後に彼が言った。
「よかったら、今回俺と一緒に行かないか?」
「え?」
仕事とやらに私が一緒に行っても邪魔にならないものなの?
「ちょっと前から考えていて――だから今日会えなくても本当は明日侯爵家に行こうかと思っていた」
「うん」
「王太子に、俺がお前に求婚していることを承諾してもらおうと思っている」
おうたいし。
この国の――王子様ってこと!?
あまりのことにぽかんと瞬く私に、ヴィクターが、ここが重要! 交渉の余地あり! 絶対に承諾させる! とばかりに畳みかけてくる。
「今回王太子には仕事の関係で、直接お目にかかる機会がある。その時に殿下に求婚の承諾を得ておけばお前が横から誰かにかっさわれることもないし、俺が安心する」
う、うん。
君はもう私が求婚を承諾するということを疑ってないよね? とはいえヴィクターくらい洞察力が鋭い男だったら私の気持ちは丸わかりなのだろう。
だって拒否する理由がない。
彼はアリアナの家族とも親しいし、そして私の状況を寸分違わず理解してくれている。彼の人間性も知性もとても好ましく思っている。そしてこれだけ私のことを溺愛し、大事にしてくれているのだ。違う世界から来た彼より本当は年上の私をこんなに求めてくれる人は他には現れないだろう。彼の心配は杞憂だ、と思っているのだが、初恋で目がくらんでいるヴィクターは外堀を完全に埋めてしまわないと安心できないみたいだ。
今までいつかは、彼の未来のためにヴィクターの求婚を断らなければならないかと思っていた私だがこれだけ素敵な人に熱烈に求められて嬉しくないわけがない。この3ヶ月私はYESを言わないよう、むしろよく耐えた。
(もう、自分の心にちょっとは素直になってもいいかな)
「いいよ」
私があっさり頷くと、彼の動きが止まった。
さて、もうすぐ侯爵家に到着する、というタイミングで彼が言った。
「三日後、王宮に行かなければならない」
仕事なんだ、と続ける。
彼が両家に私への求婚の意思を明らかにしてから既に数ヶ月経っているが、その間にも既に数回彼は王宮との行き来をしているのを知っている。王宮自体はここから馬車で数時間行ったところにあるらしく、頑張れば日帰りも可能だが、仕事となると毎回数日留守にするので今回もそうなのかなと思っていると、しばらく逡巡した後に彼が言った。
「よかったら、今回俺と一緒に行かないか?」
「え?」
仕事とやらに私が一緒に行っても邪魔にならないものなの?
「ちょっと前から考えていて――だから今日会えなくても本当は明日侯爵家に行こうかと思っていた」
「うん」
「王太子に、俺がお前に求婚していることを承諾してもらおうと思っている」
おうたいし。
この国の――王子様ってこと!?
あまりのことにぽかんと瞬く私に、ヴィクターが、ここが重要! 交渉の余地あり! 絶対に承諾させる! とばかりに畳みかけてくる。
「今回王太子には仕事の関係で、直接お目にかかる機会がある。その時に殿下に求婚の承諾を得ておけばお前が横から誰かにかっさわれることもないし、俺が安心する」
う、うん。
君はもう私が求婚を承諾するということを疑ってないよね? とはいえヴィクターくらい洞察力が鋭い男だったら私の気持ちは丸わかりなのだろう。
だって拒否する理由がない。
彼はアリアナの家族とも親しいし、そして私の状況を寸分違わず理解してくれている。彼の人間性も知性もとても好ましく思っている。そしてこれだけ私のことを溺愛し、大事にしてくれているのだ。違う世界から来た彼より本当は年上の私をこんなに求めてくれる人は他には現れないだろう。彼の心配は杞憂だ、と思っているのだが、初恋で目がくらんでいるヴィクターは外堀を完全に埋めてしまわないと安心できないみたいだ。
今までいつかは、彼の未来のためにヴィクターの求婚を断らなければならないかと思っていた私だがこれだけ素敵な人に熱烈に求められて嬉しくないわけがない。この3ヶ月私はYESを言わないよう、むしろよく耐えた。
(もう、自分の心にちょっとは素直になってもいいかな)
「いいよ」
私があっさり頷くと、彼の動きが止まった。