元書店員ですが、転生したら貴族令嬢になっていました!
番外編
蜂蜜より甘い
二人で暮らし始めてしばらくしたとある日。
「ああ、すごい勢いでフレンチトーストが食べたくなった」
今日はヴィクターも仕事が休みで、二人でのんびりと居間で過ごしている。時計を見ると午前十時だ。小腹がすいてもおかしくないそんな魔の時間。
字が読めるようになって本を読むようになった私。最近見つけた、お気に入りの作者が書いた恋愛小説を脇において私がそうやって呟くと、隣でなにかの書類をめくっていたヴィクターが、わかりやすく反応した。
「俺も食べたい」
この人は、見た目がいかついというのに結構な甘党だ。それでも本人は私の作ったスイーツを食べるまではそうではなかったと言い張っているので、話半分に聞いている。
「じゃ、作ろうか」
フレンチトーストは私達のお気に入りのおやつだ。材料が少なくても出来るし、この世界でも蜂蜜や、フルーツは手に入るからそれを添えたら、十分すぎるほどのスイーツとなる。私が立ち上がると、当たり前のようにヴィクターも立ち上がった。
「ヴィクターは仕事が残っているんじゃないの? フレンチトーストくらいならすぐに作れるから、待っててくれたらいいよ?」
「せっかくの休みなのに凛音と離れて過ごすのは嫌だ」
「……そう」
直球の愛情表現に慣れつつあるとはいえ、ケイン伯爵激似のヴィクターに言われると正直破壊力が凄い。勿論、彼の顔がいいから照れるのではない。私がヴィクターが好きだから、こそなのだけど。顔が真っ赤になったであろう私の頬をつんとつついたヴィクターが満足そうににやりと笑った。
「最近凛音を照れさせると幸せな気持ちになる」
「なにそれ」
「わからん。俺ばかりが好きじゃないと知って、安心するのかな」
「――ッ!」
フレンチトーストにかける蜂蜜よりもずっと甘いヴィクターの言葉に、すっかりお腹がいっぱいになってしまった私であった。
「ああ、すごい勢いでフレンチトーストが食べたくなった」
今日はヴィクターも仕事が休みで、二人でのんびりと居間で過ごしている。時計を見ると午前十時だ。小腹がすいてもおかしくないそんな魔の時間。
字が読めるようになって本を読むようになった私。最近見つけた、お気に入りの作者が書いた恋愛小説を脇において私がそうやって呟くと、隣でなにかの書類をめくっていたヴィクターが、わかりやすく反応した。
「俺も食べたい」
この人は、見た目がいかついというのに結構な甘党だ。それでも本人は私の作ったスイーツを食べるまではそうではなかったと言い張っているので、話半分に聞いている。
「じゃ、作ろうか」
フレンチトーストは私達のお気に入りのおやつだ。材料が少なくても出来るし、この世界でも蜂蜜や、フルーツは手に入るからそれを添えたら、十分すぎるほどのスイーツとなる。私が立ち上がると、当たり前のようにヴィクターも立ち上がった。
「ヴィクターは仕事が残っているんじゃないの? フレンチトーストくらいならすぐに作れるから、待っててくれたらいいよ?」
「せっかくの休みなのに凛音と離れて過ごすのは嫌だ」
「……そう」
直球の愛情表現に慣れつつあるとはいえ、ケイン伯爵激似のヴィクターに言われると正直破壊力が凄い。勿論、彼の顔がいいから照れるのではない。私がヴィクターが好きだから、こそなのだけど。顔が真っ赤になったであろう私の頬をつんとつついたヴィクターが満足そうににやりと笑った。
「最近凛音を照れさせると幸せな気持ちになる」
「なにそれ」
「わからん。俺ばかりが好きじゃないと知って、安心するのかな」
「――ッ!」
フレンチトーストにかける蜂蜜よりもずっと甘いヴィクターの言葉に、すっかりお腹がいっぱいになってしまった私であった。