元書店員ですが、転生したら貴族令嬢になっていました!
5.引き続き混乱しております!
オートミール地獄が終わると、メイド風おばさんが高級そうな陶器に紅茶っぽいものを注いでくれた。本当の紅茶かどうかはわからないけど、吹き替え口パク自動翻訳モードで、紅茶って訳されたから紅茶だと思うことにした。さっきの食事もオートミールって訳されてたけど、私の知ってるオートミールではないのかもしれない。
けれど、紅茶は文句なく美味しかった。暖かい飲み物を口にして、少しだけ安堵する。メイド風おばさんは私がすることを側に立ったまま見守っていたが、紅茶を飲み終えたタイミングで、話しかけられる。
「お嬢様、ご主人様がお見えになるまで、お休みになられますか?」
「ご主人様?」
メイドのおばさんは私の反応に慣れてきたようで、言い直してくれた。
「お父上です、お嬢様の」
あまりの食事の美味しくなさで、先程のお医者さんとの会話を忘れていた。
「いいえ、このまま起きています」
「左様ですか。ではまた何かあれば呼び鈴を鳴らしていただければ」
メイド風おばさんが手慣れた様子でカチャカチャと陶器を片付け始めた。彼女が指し示した呼び鈴はドアの前に垂れ下がっていた。これを鳴らしたらこの人が毎回来てくれるのだろうか? ということは、彼女がアリアナ付きのメイドってことなんだろう。
「あの、お名前を伺ってもよろしいですか?」
私がそう尋ねたのは、彼女と顔を合わせることが多くなるのであれば、名前を知っておく必要があると思ったからだ。
「私のですか?」
心底びっくりされた。その反応に私が戸惑っていると、メイド風おばさんが教えてくれた。
「普通メイドの名前なんて知らなくていいのですよ」
「え? そうなんですか?」
じゃあ呼ぶときはどうするのだろう。
「どう見てもお嬢様、なんですけどねぇ……お嬢様、ではないんですねぇ……」
「ごめんなさい……ご不快な質問だったんでしょうか?」
そう謝ると、またまた目を大きくしたメイド風おばさんが―――思わず、という感じで、苦笑した。
「いいえ、決してそのようなことはありません。私はティナです、お嬢様」
ティナさんが笑ってそうやって名前を教えてくれた。
少しだけ打ち解けたような気がしたティナさんに、この国の名前を教えてもらう。
「グラーツ王国です」
「グラーツ……」
私の知っている地球儀には絶対載っていない名前だと思う。
「ちなみに今何年、でしょう?」
「AP468年になります」
「AP……」
私の知っている時間軸でも、時空でもないことを改めて実感したのだった。けれどどうしてこのような事態になっているのか自分でも分からない以上、哀しいことに打つ手はありません。
けれど、紅茶は文句なく美味しかった。暖かい飲み物を口にして、少しだけ安堵する。メイド風おばさんは私がすることを側に立ったまま見守っていたが、紅茶を飲み終えたタイミングで、話しかけられる。
「お嬢様、ご主人様がお見えになるまで、お休みになられますか?」
「ご主人様?」
メイドのおばさんは私の反応に慣れてきたようで、言い直してくれた。
「お父上です、お嬢様の」
あまりの食事の美味しくなさで、先程のお医者さんとの会話を忘れていた。
「いいえ、このまま起きています」
「左様ですか。ではまた何かあれば呼び鈴を鳴らしていただければ」
メイド風おばさんが手慣れた様子でカチャカチャと陶器を片付け始めた。彼女が指し示した呼び鈴はドアの前に垂れ下がっていた。これを鳴らしたらこの人が毎回来てくれるのだろうか? ということは、彼女がアリアナ付きのメイドってことなんだろう。
「あの、お名前を伺ってもよろしいですか?」
私がそう尋ねたのは、彼女と顔を合わせることが多くなるのであれば、名前を知っておく必要があると思ったからだ。
「私のですか?」
心底びっくりされた。その反応に私が戸惑っていると、メイド風おばさんが教えてくれた。
「普通メイドの名前なんて知らなくていいのですよ」
「え? そうなんですか?」
じゃあ呼ぶときはどうするのだろう。
「どう見てもお嬢様、なんですけどねぇ……お嬢様、ではないんですねぇ……」
「ごめんなさい……ご不快な質問だったんでしょうか?」
そう謝ると、またまた目を大きくしたメイド風おばさんが―――思わず、という感じで、苦笑した。
「いいえ、決してそのようなことはありません。私はティナです、お嬢様」
ティナさんが笑ってそうやって名前を教えてくれた。
少しだけ打ち解けたような気がしたティナさんに、この国の名前を教えてもらう。
「グラーツ王国です」
「グラーツ……」
私の知っている地球儀には絶対載っていない名前だと思う。
「ちなみに今何年、でしょう?」
「AP468年になります」
「AP……」
私の知っている時間軸でも、時空でもないことを改めて実感したのだった。けれどどうしてこのような事態になっているのか自分でも分からない以上、哀しいことに打つ手はありません。