元書店員ですが、転生したら貴族令嬢になっていました!
6.イケオジが父親でした!
(絶望……)
ぐったりしているとティナさんが【この国の子供が一番初めに読む】絵本を持ってきてくれた。
本屋で勤務するくらいなの、それなりに活字中毒気味である。最近はお手軽な電子書籍に手を出しがちだったけれどやはり絵本でもいいから触ってると気持ちが落ち着く。
持ってきてくれたのは、にんじん(推定)の横に、にんじんなんだろうなっていうスペルが書いてある絵本だった。これは文字を覚えるのに確かに役に立つはずだ。数字の隣にもスペルが書いてある!
しかしすぐにはたと気づいた。
何しろ読み方が分からない。誰かに読んでもらっても、私には自動翻訳機能があるから、にんじん、にしか聞こえないのだ。理解としては、にんじんて日本語で言いながらこの文字を書けばいいのだろうか。けれど文字が書けないと、万が一何かが起こって自動翻訳機能が使えなくなってしまったら、私は途端に困り果てる。
再び絶望、と思った途端に廊下が慌ただしくなって、ドアがあけられる。すると40代くらいかなと思われる、清潔そうな白いシャツとグレーのパンツ姿のイケオジが入ってきたのである。
「アリアナ!」
ベッドに寄ってきて、ぎゅっとハグされる。おおぅ、イケオジにぎゅっとされた……。顔を見て納得。この方はアリアナの父親さんですね。碧の瞳と淡くて綺麗な金髪なんか完璧父からの遺伝だろう。アリアナ父がその碧の瞳で私の顔をじっと見つめた。
「ギルバードに聞いた。どうみてもアリアナにしか見えないのだがな……」
ふうとため息をつくと、ベッドサイドにある丸椅子に腰かけた。
ギルバードといいティナといい、アリアナ父といい、しかしみんな優しい。娘(だと彼らは思っている)私が突然の世迷い言(と思われても仕方ないこと)を言い出したというのに、彼らは一生懸命受け入れようとしてくれている。
「あの……お名前を伺っても?」
恐る恐る尋ねると、アリアナ父がはっと目を見開いた。この国では、名前を尋ねることはやはり無作法なのだろうか。
「アリアナからそんなこと言われる日が来るとは……」
彼はしかしすぐに気を取り直したように、私に名前を教えてくれた。
「私は、クリスティアーノ・シュワルツコフ侯爵だ」
「こうしゃく……」
現代日本では非現実な称号である。そういえばケイン伯爵シリーズで、ステファン侯爵て登場人物がいたのを突然思い出した。
「ギルバードによると、貴女は違う言葉を操る国に産まれたらしいな。年齢もアリアナよりは年上だとか」
「あ、はい、今年31歳になりました」
今度こそ侯爵が驚きを顔いっぱいに示した後、微かに笑みを浮かべた。
「女性が赤裸々な年齢を言うのは、この国ではないから新鮮だな」
「そ、そうなんですか!? すみません……」
それでさっきギルバードがめちゃくちゃ驚いていたのか。私が謝罪すると、気にしなくていい、と言わんばかりに侯爵が手をひらひらさせた。
「それで名前は何と?」
「皆原凛音です……あ、凛音が下の名前です」
侯爵は頷いた。とりあえずアリアナとは別人格として扱ってくれるらしい。
「リンネ」
「はい」
「リンネも困っているとは思うのだが、私たちも非常に困惑している」
「はい」
それはそうだろう、と私は頷いて同意を示した。
「とりあえず、アリアナの状況を話しても構わないだろうか?」
ぐったりしているとティナさんが【この国の子供が一番初めに読む】絵本を持ってきてくれた。
本屋で勤務するくらいなの、それなりに活字中毒気味である。最近はお手軽な電子書籍に手を出しがちだったけれどやはり絵本でもいいから触ってると気持ちが落ち着く。
持ってきてくれたのは、にんじん(推定)の横に、にんじんなんだろうなっていうスペルが書いてある絵本だった。これは文字を覚えるのに確かに役に立つはずだ。数字の隣にもスペルが書いてある!
しかしすぐにはたと気づいた。
何しろ読み方が分からない。誰かに読んでもらっても、私には自動翻訳機能があるから、にんじん、にしか聞こえないのだ。理解としては、にんじんて日本語で言いながらこの文字を書けばいいのだろうか。けれど文字が書けないと、万が一何かが起こって自動翻訳機能が使えなくなってしまったら、私は途端に困り果てる。
再び絶望、と思った途端に廊下が慌ただしくなって、ドアがあけられる。すると40代くらいかなと思われる、清潔そうな白いシャツとグレーのパンツ姿のイケオジが入ってきたのである。
「アリアナ!」
ベッドに寄ってきて、ぎゅっとハグされる。おおぅ、イケオジにぎゅっとされた……。顔を見て納得。この方はアリアナの父親さんですね。碧の瞳と淡くて綺麗な金髪なんか完璧父からの遺伝だろう。アリアナ父がその碧の瞳で私の顔をじっと見つめた。
「ギルバードに聞いた。どうみてもアリアナにしか見えないのだがな……」
ふうとため息をつくと、ベッドサイドにある丸椅子に腰かけた。
ギルバードといいティナといい、アリアナ父といい、しかしみんな優しい。娘(だと彼らは思っている)私が突然の世迷い言(と思われても仕方ないこと)を言い出したというのに、彼らは一生懸命受け入れようとしてくれている。
「あの……お名前を伺っても?」
恐る恐る尋ねると、アリアナ父がはっと目を見開いた。この国では、名前を尋ねることはやはり無作法なのだろうか。
「アリアナからそんなこと言われる日が来るとは……」
彼はしかしすぐに気を取り直したように、私に名前を教えてくれた。
「私は、クリスティアーノ・シュワルツコフ侯爵だ」
「こうしゃく……」
現代日本では非現実な称号である。そういえばケイン伯爵シリーズで、ステファン侯爵て登場人物がいたのを突然思い出した。
「ギルバードによると、貴女は違う言葉を操る国に産まれたらしいな。年齢もアリアナよりは年上だとか」
「あ、はい、今年31歳になりました」
今度こそ侯爵が驚きを顔いっぱいに示した後、微かに笑みを浮かべた。
「女性が赤裸々な年齢を言うのは、この国ではないから新鮮だな」
「そ、そうなんですか!? すみません……」
それでさっきギルバードがめちゃくちゃ驚いていたのか。私が謝罪すると、気にしなくていい、と言わんばかりに侯爵が手をひらひらさせた。
「それで名前は何と?」
「皆原凛音です……あ、凛音が下の名前です」
侯爵は頷いた。とりあえずアリアナとは別人格として扱ってくれるらしい。
「リンネ」
「はい」
「リンネも困っているとは思うのだが、私たちも非常に困惑している」
「はい」
それはそうだろう、と私は頷いて同意を示した。
「とりあえず、アリアナの状況を話しても構わないだろうか?」