ただ今、2人の王子に愛され中
「なんだ、お前モテモテじゃん。」
桜庭浩輝はそう言うと、からからと笑った。
「いいじゃんいいじゃん、付き合っちゃえよ。」
「そんなテキトーなこと言わないでよ…。」
私は唇をとがらせた。
今、私の部屋のベッドに腰かけているのは、桜庭浩輝。
4つ年上の、私の兄だ。
「音葉が俺に恋愛相談なんて珍しいと思ったら、なんだ、悩んでなさそうじゃん。」
「悩んでるよっ!」
「ははは、冗談冗談。」
お兄ちゃんは、わりと整っている顔を、くしゃくしゃにして笑った。
「よしよし、大切なわが妹のために、恋愛プロの俺がアドバイスしてやろう。」
「何、恋愛プロって…。」
お兄ちゃんは今、大学2年生。
現在、1つ年上の超絶美人な彼女さんがいる。
私も1度会ったことがあるけど、目を疑うほどの美人だった。
「音葉はさ、誰のことが好きなの?」
「えっ…。そんなの、特にないけど。」
「マジ?なんかあるだろ、こんな男がタイプだ~、とか。」
「全然ない。…だから困ってるんだよ。どうすればいいのか、分からない。」
「うーん…じゃあ、全員断っちゃえばいいじゃん。」
「ぜ、全員?」
「うん。だって、音葉にその気がないなら、期待させるだけかわいそうだろ?」
「かわいそう…。」
「中沢と…岡田陣、だっけ?好きじゃないなら、断った方がいいよ。」
「でもそれって、逆に申し訳ない気がする…。せっかく好きだって言ってくれたのに。」
「うーん…俺には何とも言えないな。大事なのは音葉の気持ちだし、最終的に決めるのは音葉だからな。」
「うん…そうだよね…。」
突然、お兄ちゃんが私の頭に手を置いて、くしゃくしゃっとなでた。
「そんな深く考え込むなって!恋愛なんて、ほとんど直感で決めてくもんだよ。」
「そう言ったってさあ…。」
「よし、じゃあ今度兄ちゃんが、気分転換に映画館に連れてってやる。」
なぜそこで映画館という考えが出てくるのか…。
お兄ちゃんの発想力は相変わらず謎だが、でも、
「本当?嬉しい!じゃあ、今度公開のアニメ映画がいいな!」
「おっしゃ!じゃあ、来週の日曜な!」