ただ今、2人の王子に愛され中
嫉妬から始まる恋〈隼人side〉
『今、嫉妬してた』
桜庭音葉は、なぜこんなにも鈍感なのか。
これは、俺がずっと考え続けてきた疑問だった。
なぜこんなにも鈍感で、とろくて、不器用で、それでいて可愛いのか。
いくら考えたって答えが出るはずもない。
それが、桜庭音葉なのだから。
そして、彼女は途方もないくらいいいヤツなのだ。
人から何かを頼まれた時、断ることができない。
この間も、クラスの女王的存在である立花里穂から、プリントを職員室に運べと命令されて、断れずにいた。
どうやら音葉は、立花に目を付けられてしまったらしい。
音葉本人は、そのことに全く気づいていないようだが。
とにかく、音葉は人の頼みをなんでも聞いてしまう、とことんいいヤツなのだ。
…都合のいいヤツ、というのかもしれない。
そして音葉は、つい昨日、名前も知らない男子の告白を受けようとした。
…あり得ると思うか?
初めて知り合った男子からの誘いだぞ?
普通、断るだろ?
俺が音葉の後をこっそりついて行っていなければ、今頃音葉は、あの中沢とかいう男と付き合い始めてしまっていたかもしれない。
それは何が何でも避けなければ。
音葉は、絶対に誰にも渡さない。
もちろん、兄貴にも。
…そうだ、兄貴。
どうやら俺の兄貴、岡田陣は、音葉に惚れてしまったらしい。
まずい。
兄貴に音葉を取られたら、俺、本気で病んでしまうかもしれない。
だから今、俺にとって1番の敵は兄貴。
申し訳ないが、中沢など気にしている場合ではない。