ただ今、2人の王子に愛され中
「隼人くん、これ、いらないからあげる!」
同級生の女子…竹内優羽からそれをもらったのは、確か3日前のこと。
「え…なんで俺に?」
優羽が俺に渡してきた…押し付けてきたモノは、映画の前売券だった。
今話題の、今度公開されるらしいアニメ映画。
「いいからもらっといてよ。あたし、その日に観に行けなくなっちゃったんだ。」
「は?だから、なんで俺に?」
「だって、隼人くん、いつも暇そうじゃん。」
え、そうなの?
俺って、周りからそんな風に見られてんの?
「本当は家族にあげようと思ってたんだけど、みんな別の日のチケット取っててさあ。捨てるのももったいないし、隼人くんにあげる!」
「でも俺、アニメとか興味ないんだけど。」
「いいから!観に行く時間くらいあるでしょう?」
ある。
観に行く時間は、確かにある。
前売券に記載されている上映日は、特に何の予定もない日だ。
でも、だからと言って…。
「じゃ、見たら感想教えてよ~。」
優羽はそう言うと、とっとと去って行ってしまった。
そして3日経った今日。
例のアニメ映画の上映日。
俺は正直言って、アニメに興味などことさらない。
というか、そもそも映画に興味がない。
だが、せっかくここにチケットが1枚ある。
無駄にしてしまうのはさすがに忍びない。
俺は、しぶしぶ映画館に向かうことにしたのだった。