ただ今、2人の王子に愛され中


「ご、ごめんなさい!あの、大丈夫ですか?」


 私は、倒れている男の子に向かって、右手をさし出した。

 男の子は、それを軽く払いのける。


「大丈夫だよ。ちょっとだけ、腰痛いけど。」


 彼は、柔らかく微笑みながら起き上がった。


「君こそ、大丈夫だった?」


 私は、言葉を失った。


 立ち上がった男の子は、思わず息をのんでしまうほどの、美少年だった。

 抜群のスタイル。

 よく通る、透明感のある声。

 そして、

 隼人を超えるほどの、整った顔立ち。


「は…はい……大丈夫でした…。」


 私が答えると、彼は、踊り場に散らばったプリントを見まわした。


「ずいぶんな量だね。これ、君1人で運んでるの?」

「はい。同級生に…頼まれたんで。」

「どこまで運ぶの?」

「職員室まで、です。」

「遠いな…。ねえ、僕も手伝っていい?」


 そう言うと、彼は私の答えを聞く前に、プリントを拾い集め始めた。


「えっ、そんな、悪いです!」

「いいのいいの、気にしないで。」

「でもっ。」


 私の唇の前に、男の子の人差し指が指しだされた。

 突然のことに、私は再び言葉を失う。


「しーっ。手伝わせてよ。女の子を助けることが、男の役目でしょ?」


 どこかで聞いたようなセリフだ。


「ぶつかっちゃったの、僕の責任もあるからさ。」


 結局私は、彼と一緒にプリントを拾い集め、職員室に運ぶことになった。

< 9 / 29 >

この作品をシェア

pagetop