チョコレートがなくても
絢音には、大学生の頃から付き合っている彼氏がいる。名前は赤石和馬(あかいしかずま)。身長は男性にしては低めだが、可愛らしい顔立ちをしていて、彼の周りにはよく女の子が集まっていた。

勉強ができ、スポーツもできる彼に振り向いてもらえるはずがない……。そう絢音は恋を諦めようとしていたのだが、和馬の方から告白され、お付き合いを始めたのだ。

大学を卒業してから、絢音は小さな会社に就職したものの、和馬は海外にも支社を持つ大手企業に就職した。和馬の恋人がこんな自分でいいのだろうか、そう絢音は何度も思ってしまった。

「僕は、絢音だから一緒にいたいって思ったんだ。だから、一緒に暮らさない?」

社会人一年目のバレンタインの日、和馬とデートをした時にそう言われ、絢音は嬉しさでいっぱいになりながら返事をした。それからも、二人の恋はゆっくりと育っている。

しかし一年と数ヶ月前、和馬はヨーロッパに出張に行くことになってしまった。海外出張が多いことを絢音はわかっていたが、普段はどんなに長くても一ヶ月などだったため、一年という期間に戸惑ってしまう。
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