チョコレートがなくても
和馬が帰国するまでの日を数え、絢音はため息をついた。



街に出れば、バレンタインの文字があちこちで揺れ、チョコレートのコーナーがある。絢音はそれを見ないようにしながら、毎日家と会社を往復した。しかし……。

「今年はガトーショコラマフィンに挑戦してみたの!」

「私はチョコレートケーキ!彼、喜んでくれるといいなぁ」

バレンタイン当日、社内の女性たちはどこか浮かれていて、仕事が終わったら彼氏とデートするんだと頰を赤く染めている。絢音は寂しさを誤魔化すようにパソコンと向き合い続けた。

「絢音、明日は休みだしさ二人で飲みにでも行かない?それか、帰りにスイーツバイキングに行くのもいいよね!」

気を遣ってか、同僚が「ここのスイーツおいしいんだって!」とスマホの画面を見せてくる。スイーツバイキングは絢音も好きなのだが、やはりスイーツバイキングので内容を見ればバレンタインらしくチョコレートを使ったスイーツの食べ放題だ。
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