Be My Valentine.
1日かけて各学年の部員や関わりのある人を訪ね歩き、授業に来た先生やすれ違う先生にも渡してタッパーの中身は残り数枚となっていた。
「あい、じゃあ部活あるやつは頑張れよ、さよなら。」
岬先生はそういって終礼をしめて、さっさと教室をあとにした。
クラスメートが各々部活や更衣室へと散っていく。
今日部活のない私は持ち帰る教科書を選別してカバンに詰め込んでいた。
未だに彼に渡せていない本命チョコの入った紙袋を見つけて手を止めた。
彼はきっと、生物実験準備室にいるのだろう。
ただ、そこに行く勇気が出ずに足踏みしていた。
時計を見て視線を下ろすと、教卓に黒い軸のボールペンが置きっぱなしになっていた。
私はそれを手に取り、少し考えてからそのボールペンと、チョコの入った白い紙袋、荷物を持って教室を出た。
階をひとつおりて、生物実験室の前まで来た。
生物の常勤教師は岬先生だけ、講師の先生も今日はだれもきていないはずだ。