お願い、名前を呼んで。
劇場には大勢の人達が集まっていた。
さすが、歴史ある劇場だ。

30分後に竹内君と沢村君が到着して、セレモニー開始まで、間もなくとなった。セレモニーが始まってしまえば、私達はただの観客にすぎない。

それでも多くのお客様が新しくなった劇場を見て、感嘆の声を上げてくれるのを見ると、心が熱くなる。

途中、隼人が私の横に来て、そっと耳元で囁いた。

「優香、お疲れ様。よく頑張ったな。とても素敵な劇場だよ。」

私はその言葉に涙をグッと堪えた。

セレモニーの後、こけら落としの舞台があり、私達もクライアントから招待を受けていた。

クライアントとは色々と問題もあったけど、最終的には素晴らしい劇場が完成したと、とても感謝してもらった。

舞台はとてもこれからの未来に希望を感じられる
感動的な内容で、それを自分達の手掛けた劇場で見ることができ、皆んな泣いていた。

舞台が終わると、クライアントに最後の挨拶をして、私達は劇場を後にした。

緊張感から解き放たれた皆んなの顔は、清々しく、輝いて見えた。

「さぁ、これで心置きなく飲めるぞ!」

誰が声をあげると、皆んながそれに続いた。
私達は足取り軽く、居酒屋に直行した。

途中、竹内君と沢村君が会社で用事を済ませてから、行くと言って、別の方向に向かっていった。

今朝の電話ではそんなこと言ってなかったのにと思いつつ、二人の後ろ姿を見送った。
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