お願い、名前を呼んで。
お昼になっても、まだ二日酔いが残っている。
私は、ビル内にある社食に行く事にした。

食欲はないけど、二日酔いにいいと聞くお味噌汁とお茶を持って、空いている席に座った。

二日酔いで仕事をするのは、いつも以上に疲れる。
あんなに飲んだのはいつ以来だろう。

お味噌汁を啜りながらぼんやりしていると、頭の上から声が聞こえた。

「野崎、ここいい?、」

それは紛れもなく、竹内君の声だ。
耳元の囁きの残像が蘇る。

「えっ、うん。」

私は恥ずかしくなって、顔を上げられない。
なのに、『野崎』と呼ばれて、ちょっと寂しくなった。

どうしたいんだ、私?

「野崎、体調は大丈夫?藤田さんが、かなり辛そうだったって言ってたけど。」

「ありがと。でも、朝より随分マシになったから。」

「そうか、それなら良かった。それでさ、野崎は昨日のこと、どこまで覚えてるの?」

まさかのど直球の質問に、私は飲んでいた味噌汁を吹き出しそうになり、咳き込んだ。

「おい、大丈夫か。」

「うん、大丈夫。竹内君が変な質問するから。」

「ごめん。ちなみに俺は酔ってはいたけど、ちゃんと全部覚えてるから。」

そんな答え、ずるい。
なら、教えてよ。
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