お願い、名前を呼んで。
今までは、個人宅のお客様がほとんどだったから、必然的にお客様も女性が多くて、営業が女であることを喜ばれることも多かった。

でも、今回は違う。
もちろん、プロジェクトチームやクライアントの担当者の中には女性はいるけれど、やっぱり最終権限を持っているのは、男性なのだ。

ここに来て、「男社会」を痛感している。

それに劇場のリニューアルというのは、クライアントにとっても大きなビジネスとなるので、関わる人の数やそれぞれの立場、コスト管理など、常に緊張感が漂い、今までにはなかった目線とアンテナが要求される。

それはやり甲斐にもなるけど、本音を言えば、時々、疲れて投げ出したくなる時もある。

でも、そのリスクの大きさを考えると怖くて、結果、「踏み止まる」ことを選んでしまう。
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