お願い、名前を呼んで。
今回の資材割引のことだって、本当は俺のおかげなんかじゃない。
確かに、アクトの谷口さんに割引の打診をしたのは俺だけど、優香の仕事関係だって告げると、直ぐに快諾してくれた。

「野崎さんにはいつもお世話になってるから。そんな理由があるなら、微力ながら、力にならせて
もらいますよ。野崎さんは、いつも僕達、業者の事を考えてくれている数少ない大切な方ですから。」

俺は優香に格好を付けたくて、電話では言わなかったけれど、今回のことは俺の力なんかじゃい。

優香がいつも仕事に真摯に向き合って、取引業者へも細やかな心配りをしてきた結果だ。

疑いたくはないけど、俺には一人、携帯に勝手に出た奴の心当たりがある。

あの人なら、優香に何か言ったとしても驚かない。
一緒に仕事をすることも多いから無碍には出来ずに適当に付き合って来たけど、優香に余計なことを言ったとしたら、このまま放っておく訳にはいかないな。

後でそれとなく探りを入れてみよう。

電話を切った後、俺は自分の仕事に戻った。

優香の言う通り、俺も忙しいことには違いない。
ショッピングモールのオープンが近付くにつれて、その忙しさもピークを迎えつつある。
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