お願い、名前を呼んで。
「ありがとう。わざわざ落としてくれたんだ。今朝は子供達も起きてたし、家でゆっくりコーヒーを飲む時間もなかったから、ホッとするよ。」

私達は、静かなオフィスでひと時のコーヒータイムを楽しんだ。
週末の静かなオフィスも嫌いじゃない。いつもより仕事も捗るし。

「さぁ、じゃあ、仕事に取り掛かるか。」

「そうですね、山田部長にプレゼンなんて、何か変な感じですけど。」

「あの人はああ見えて、なかなか厳しいから。
しっかりと準備しとかないとね。」

「山田部長が厳しいんですか?私は、正直、いつもニコニコと笑って、他人任せってイメージなんですけど。」

「確かに最近は、そうかもしれないね。でも、昔はもっと厳しかったし、現役の営業マンの時は大型案件をどんどん成功させる、かなりのやり手だったって話しだよ。」

「へぇ、何だか意外です。」

私達は、最終の擦り合わせをして、詳細を詰めていく。改めて、企画書や資料を確認すると、小さなミスや改善点も見つかって、修正を加えた。

「先に見ておいて良かったですね。このままクライアントに出してたら、それこそあの統括部長から何を突っ込まれたか分からなかったです。」

「そうだね。でも、これで更にいいものが出来て良かったよ。」
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