お願い、名前を呼んで。
昼の1時を過ぎた頃、山田部長がオフィスに現れた。
てっきりスーツかと思っていたら、いかにもゴルフ帰りって格好で拍子抜けする。

「こんな格好ですまないね。朝から付き合いゴルフがあって。ハーフラウンドだけ回って来たよ。」

ゴルフだけが趣味みたいな部長がハーフだけで切り上げるなんて、一応、私達のことを考えてくれているのかな。

「じゃあ、早速、頼むよ。夕方からの打上げには参加する予定だからね。」

私には、まだやっぱり山田部長が理解できない。

「わざわざ、ありがとうございます。もう準備は
できているので、会議室の方へお願いします。」

藤田さんは大人の対応で、山田部長を会議室へと誘導する。私は、資料を持って後を追いかける。

テーブルに着くと、山田部長へクライアントに渡す予定と同じ資料を手渡した。

それをじっくりと確認し始める部長に藤田さんが声を掛ける。

「始めてもよろしいでしょうか。」

私は緊張で手が震えている。

「野崎さん、僕相手に緊張しなくてもいいよ。僕は、
クライアントのように野蛮なことは言わないから。」

「すみません。よろしくお願いします。」
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