お願い、名前を呼んで。
約束の10分前、私達はクライアントのオフィスの前に着いた。

緊張する私と藤田さんを他所に、山田部長は相変わらずのご様子だ。

「君達なら大丈夫だよ。僕が信頼してるんだから。」

私達の背中を軽く叩きながら、山田部長は笑うけど、何を根拠にと思ってしまう。

オフィスの訪問し、いつもの会議室に通される。
3人並んで座ると、私の緊張はMAXになり、手が震え、口もカラカラになった。

時間通りに、担当課長と統括部長が会議室に入ってきた。

藤田さんと山田部長は、内田統括部長とは初対面だ。
最初に名刺交換から始まる。

「マイ・ライフ営業の山田と申します。本日はよろしくお願い致します。」

「統括の内田です。こちらこそ、よろしくお願いします。」

部長同士の初対面、見た目のスマートさでは、残念ながら、山田部長の完敗だ。

その時、思いも寄らないことを内田部長が口にした。

「あぁ、山田さんじゃないですか。お久しぶりです。マイ・ライフさんにいらしたんですね。」

「お久しぶりですね、内田さん。野崎からお名前をお伺いした時に、そうかなと思ったんですが、やはり、あの内田さんでしたか。すっかりお偉くなられて。」

何と、二人は知り合いだったんだ。
その上、山田部長は気付いていたんだ。
私達には、何も教えてくれなかったのに。
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