お願い、名前を呼んで。
私の名前
クライアントとの打合せは、藤田さんの的確なフォローもあり、スムーズに進んだ。

細かい修正はあるものの、私達が提案がほぼ通る形となり、当初の予定通りの木目を基調としたプランで、内装を任せてもらえる事になった。

打合せも終了し、クライアントとちょっとした雑談の時間が始まる。

今回、初めて参加された方の一人が、私の渡した名刺を見ながら、話しかけてくれた。

「野崎さんは、『優香』さんという名前なんですね。いい名前ですね。実は、私の娘も字は違うけど、『ゆうか』って言うんです。」

「ありがとうございます。」
　
自分の名前を褒められて、ちょっと照れるけど嬉しい。それなのに、クライアントの担当課長が横から入って来て、余計なことを言う。

「へぇ、『優香』って名前なんだ。なんか、野崎さんとはイメージが違うな。『優しく香る』なんて、私はもっと、逞しい名前を想像してましたよ。」

「俺って面白い。」と勘違いしてる人の典型だ。
デリカシーの欠けらもないのか！

周りは聞こえない振りをするか、苦笑いをするしかない。
こう言う態度が、「勘違い」を増長させていくんだろう。

微妙な空気に、私が犠牲になるしかないない。

「両親は、私にもっと優しい女の子に育って欲しかったんでしょうね。見事に期待を裏切ってしまったみたいですけど。ハッハ・・・。」

自分で言ってて虚しくなった。
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