お願い、名前を呼んで。
「いや確かに、全体の金額は下がっているのですが、御社のデザイン料と事務経費が前回より金額が上がっているのが気になりましてね。これはどういうことでしょうか。」

「はい、私共は今回、ご提案の通り、金額を下げつつも御社のコンセプトや劇場のイメージ、高級感を保ったままの変更をさせて頂きました。」

「だから?」

「それには、弊社スタッフの時間と大変な努力が必要となりました。その分の対価として、今回のデザイン料と事務経費を設定させて頂いております。」

「野崎さん、前回の私とのお話を理解して頂いて
ますか。私は、今後の御社のとのお付き合いも考えた上でお話をさせてもらったつもりですが。」

やっぱり、そう来たか・・・。
ここは何と答えようか。

私が次の応えを探していると、今までずっと黙っていた山田部長が、口を開いた。

「内田様、お言葉を返すようですが、野崎は誰よりもあなたの話を理解しております。
その上であなたが仰った無理な要望をこうやって、あなたの想像以上のものに仕上げて、お持ちしたんです。」

「では、金額の要望も聞いてもらいたいものですね。」

「そうですか、私は、十分にご要望にお応えしているつもりですが。本来なら、今提示している金額の倍は頂きたいところです。」

「倍?」

「そうですよ。私の仲間の素晴らしい仕事振りをそんなに安く見てもらったら、困りますからね。」
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