お願い、名前を呼んで。
二人並んでソファに座り、ビールで乾杯をする。

「プレゼン成功、おめでとう。」

「ありがとう。でも、今日の主役は完全に山田部長だったけどね。」

「プレゼンどうだったの?」

私は、今日のプレゼンでの出来事を話し始めた。

さっきまでは、マンションの前でカップルモード全開だったけど、一度落ち着くと、やっぱり私達は同期モードのスイッチが入る。

これはこれで気楽でいい。
ずっとドキドキしてるのも疲れるから。

そこからはビールを片手に、山田部長の武勇伝で盛り上がったり、他愛のない話をお互い報告したりして、心地良い時間を過ごした。

途中で、程よい酔いが回ってきて、今日の疲れも
あって、私は竹内君にもたれて眠ってしまった。

ふと目を覚ますと、竹内君がソファの肘掛けに、
私が竹内君にもたれていた。

どうしよう、起こした方がいいかな。
明日も仕事だし、ソファで眠ると身体も痛いよね。

でも、当然だけど、私の家にはベッドが一つしかない。
竹内君を起こせば、二人でそこで寝るということになる。

この部屋に入る時、「理性は保てない。」と宣言されたし、私もそれを承諾した。

恋人同士になった今、拒む理由もない。
私だって、竹内君とならそういう関係になっても
いいと思ってるし、逆に竹内君以外なんて考えられない。

ただただ、私は恥ずかしいだけだ。

私だって全く経験がない訳ではない。
でも、前はいつだった?って思い出せない程度の経験しかない。

あー、どうしよう。
起こすべきか、起こさぬべきか。
これは私にとっては大問題だ。

いつまでも逃げられる訳でもないなら、
いっそ、勢いのある今のうちに済ませておいた方がいいのかもしれない。
だって、後になればなる程、悩みは深くなりそうだ。

それにもし、竹内君が私じゃ駄目だって思ったとしても、今ならまだ引き返せるかもしれない。
傷は浅い方がいい。

私は意を決して、竹内君を起こそうと自分の体勢を整えた。
< 78 / 110 >

この作品をシェア

pagetop