お願い、名前を呼んで。
竹内君の方を見ると、彼の目が開いていた。
驚きで唖然となる。

「起きてたの?」

「いや、優香がモゾモゾ動くから起きた。
でも、今なら、まだ寝れるけど、どうする?」

「どうするって?ここで寝ると、明日、身体が痛いかなと思って。」

「じゃあ、ベッドに移動するって事?俺、言ったよな。理性は保てないって。」

「うん、聞いた。」

「でも、優香の心の準備が出来てないなら、俺は
このまま、ここで寝るから。」

そう言って、竹内君は目を閉じた。

やっぱり優しい。竹内君なら私を大切にしてくれる。それに、あの温かった腕の中と甘い囁きを、私は今、恋しいとさえ感じている。

竹内君の胸に顔を寄せた。

「ねぇ、起きて。ちゃんとベッドで寝よう。」

目を閉じたまま、私の頭を撫でて、
「優香は大丈夫なの?」って聞いてくれる。

私は静かに頷いた。

竹内君は目を開けて身体を起こすと、私を優しく抱き締めた。

「好きだよ。優香。」

そうして、私の手を取り寝室に向かった。

心臓は爆発寸前だった。

私をベッドに横たえると、竹内君の顔が近付いて来る。

「あの夜、眠ってる優香にキスだけした。」

「そうなんだ。でも、私にとっては今日が初めて
だから、ドキドキして胸が痛いんだけど。」

「今夜は、絶対忘れられない夜にするから。」

そう言うと、竹内君はゆっくりと優しい優しいキスをしてくれた。
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