お願い、名前を呼んで。
緊張もせず落ち着き払った逞しい女。
「優香」なんて女の子らしい名前も似合わない。

これが周りからの今の私の評価なんだ。

そもそも、私の周りで私の名前が『優香』であることを何人の人が知っているんだろう。

自己紹介では「マイ・ライフの野崎です。」が定着しているし、周りからは「野崎さん」と呼ばれる。

最近、私のことを『優香』と呼ぶのは、たまに電話で話をする両親と、昔からの親友の菜穂子ぐらいだ。

これは独身女の「あるある」かもしれない。

相手が誰でもいい訳でもないけれど、私だって、時には、名前で呼ばれたいと思うこともある。 

素の自分を受け入れて貰えているような安心感を覚えるからだ。
気を張らずにいられる、少しの我儘なら許される、そんな空気に憧れる。
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