お願い、名前を呼んで。
それと同時に、私のパーカーのファスナーが下ろされていく。

私が恥ずかしさで、身体を捩ろうともがくと、
もう片方の手で押さえられてしまった。

「大丈夫。優香の下着姿も初めてじゃないから。」

「だから、私にとっては・・・。」

初めて・・・。と言い終わる前に、唇を塞がれた。
甘くて蕩けるようなキスに、私の身体は反応して
しまう。

次に、唇が解放された時には、私の全てが竹内君の瞳の中にあった。

「優香、綺麗だよ。」
耳元で甘く囁かれると、私の全身が痺れた。

胸が高鳴り、吐息が漏れることを自分でも抑えられない。

恥ずかしさと愛しさが入り混じり、私は混沌の中に引き込まれていく。

彼が優しく私を撫で、愛してくれる。
そして耳元で「優香」と囁く。

私の身体から吐息ともに、涙が溢れる。
愛されることの幸せを、全身で感じる。

竹内君がまた耳元で囁く。

「ねぇ、優香。あの時みたいに『隼人」って呼んで。」

その記憶だけは微かに残っていた。

「隼人・・・。隼人・・・。」

何度も彼の名前を呼ぶ。

「隼人、好き・・・。」

もう自分ではどうすることもできないまま、
意識を解放した。
 
私は心を満たされて、温かい隼人の腕の中で眠った。
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