お願い、名前を呼んで。
朝、目を覚ますと、私は竹内君の腕の中にいた。
守られている安心感が私を満たしていく。

時計を見ると、6時30分を過ぎたところだった。
私のいつもの起床時間だ。

本当はもっとこうしていたいけど、今日は平日だ。
昨日のプレゼン内容を本格的に進めていかなければいけない。

竹内君はどうするんだろう。
今日はどこに出社するんだろう?
それとも休み?

私はベッドから抜け出すと、バスルームに向かった。

羽織っていたガウンを脱ぐと、私の身体には、
幸せの跡が残っていた。

見えないところで良かった。
流石に竹内君は心得ているんだろう。

竹内君は今まで何人の女性の身体に幸せの跡を残して来たんだろうと、不安と嫉妬に駆られる。

駄目だ、こんなんじゃ。
今日もまた、忙しい一日が始まると言うのに。

シャワーを浴び終えて部屋に戻ると、竹内君がソファに座っていた。

「おはよう、優香。」

「おはよう、竹内君。」

「隼人だから。」

「あっ、はい。シャワー浴びる?今日は仕事は?
何時に出れば間に合うの?」

「あからさまに名前を呼ばなくなったな。
何だよ、その作戦。」

「別に、作戦って訳じゃないよ。」

ただ恥ずかしいだけだ。

「このメモを大切にしてくれてたから、今回は
許すよ。今度からはお仕置きだからな。」

竹内君は、メモをヒラヒラさせながら言った。

「やめてよ。私の大切なものなんだから。」

「書いたのは俺だから。やっぱり、優香は可愛い。」

「そんなこと言ってないで、シャワーでも浴びて
来たら。私は出勤の準備をしなきゃ。」
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