お願い、名前を呼んで。
朝の出勤ラッシュに紛れると、もうそこは日常だった。昨日の夜の出来事が遠い時間にも思える。

竹内君とのことも夢だったりして。

でも、確かに私の身体には竹内君の感触が残っている。前みたいに微かじゃなく、はっきりと。

私は、あの優しさを胸に仕事が頑張れる気がする。

オフィスに着くと同時に、電話が鳴る。
私はパソコンを立ち上げ、メールチェクをしながら、電話にも対応していく。
 
「野崎さん、今日も朝から頑張ってるね。」

いつも通り、山田部長は笑いながら横を通り抜けて行った。

私の日常は変わらない。

午後からプロジェクト会議があるので、私はそれまでに今後の工程表を作成する。
時間を横軸に、担当を縦軸にする。
これがこれからの私達の生命線となる重要な資料だ。

劇場オープンまで2ヶ月を切っている。
もう既に内装の解体には入っているから、それが終わればすぐにでも着工しなければ間に合わない。

そのために、万全の準備をしておきたい。

今日のランチは、朝買って来たおにぎりだ。
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