夏の花火があがる頃
第6話 付き合わなかった理由
めぐみに再会できた。
大学生の頃と比べて、彼女は痩せた。
元々細かったが、さらに細くなっていた。
長かった髪の毛はショートカットになっており、小さい顔は尚更小さく感じる。
長い睫毛と小さな唇。
少しだけ高い鼻。痩せた以外に何も変わっていなかった。
洋服は洗練されて、爪先に可愛らしいネイルが施されているなどそういった変化はあるものの、昔のめぐみのままだった。
「すいません。大塚駅までお願いします」
先ほど無理矢理聞き出した、めぐみの家のそばの最寄駅の名前を告げる。
行き先を告げられたタクシーは静かに動き始めた。
「……悠也は?」
「ん?何?」
「悠也はどこに住んでるの?」
「ああ、俺は池袋。あのマンションから動いてないから」
「……そうなんだ」
「俺は大塚で降りて電車で帰るから、そっから家まで乗ってけ」
悠也の言葉に、めぐみは頷いた。
ガラス窓にポツポツと雨粒が付着した。
どうやら雨が降ってきたようだ。彼女も悠也もお互いに黙って窓の外を見た。
歓楽街のネオンが車内に差し込む。
雨音と共に、窓の外にいる人々の笑い声と、タクシーのカーナビの音だけが車内に響く。
「悠也」
「何?」
「……ごめんね」
「どういうこと?」
彼女の真意が分からず、聞き返す。
それ以上めぐみは言葉を発しなかった。
肩を並べて笑い合っていた日々があったなどまるで夢物語のようだった。
あっという間にタクシーは大塚駅に到着た。
メーターを見ると三千五百円だった。
めぐみの家がいくら大塚駅から遠くても五千円あれば足りるだろう。
あまりに高額な金額をポンと渡されても困ると思い、悠也はタクシーの運転手に五千円札を手渡した。
「自分で払えるから」
自分の財布を取り出して、困ったような表情を浮かべるめぐみに「別にいいよ」と断った。そもそも彼女に支払いなどさせる気など毛頭なかった。
「あと、これ。なんかあったら連絡して」
悠也は自分の連絡先が書かれた名刺を手渡した。
彼女が番号を消していなければ連絡することは可能だろうが、この様子では消されてしまっている可能性もゼロではない。
どうにかこのチャンスにしがみつきたかった。
「……うん」
今度は断ることなく、彼女は受け取った。
めぐみを乗せたタクシーは、扉を閉めて走り出す。
もしかしたら連絡は来ないかもしれない。
雨粒が、悠也のことを包み込む。
気分はなぜだか満ち足りていた。
「慎吾。俺、間違ってないよな。きっと」
大学生の頃と比べて、彼女は痩せた。
元々細かったが、さらに細くなっていた。
長かった髪の毛はショートカットになっており、小さい顔は尚更小さく感じる。
長い睫毛と小さな唇。
少しだけ高い鼻。痩せた以外に何も変わっていなかった。
洋服は洗練されて、爪先に可愛らしいネイルが施されているなどそういった変化はあるものの、昔のめぐみのままだった。
「すいません。大塚駅までお願いします」
先ほど無理矢理聞き出した、めぐみの家のそばの最寄駅の名前を告げる。
行き先を告げられたタクシーは静かに動き始めた。
「……悠也は?」
「ん?何?」
「悠也はどこに住んでるの?」
「ああ、俺は池袋。あのマンションから動いてないから」
「……そうなんだ」
「俺は大塚で降りて電車で帰るから、そっから家まで乗ってけ」
悠也の言葉に、めぐみは頷いた。
ガラス窓にポツポツと雨粒が付着した。
どうやら雨が降ってきたようだ。彼女も悠也もお互いに黙って窓の外を見た。
歓楽街のネオンが車内に差し込む。
雨音と共に、窓の外にいる人々の笑い声と、タクシーのカーナビの音だけが車内に響く。
「悠也」
「何?」
「……ごめんね」
「どういうこと?」
彼女の真意が分からず、聞き返す。
それ以上めぐみは言葉を発しなかった。
肩を並べて笑い合っていた日々があったなどまるで夢物語のようだった。
あっという間にタクシーは大塚駅に到着た。
メーターを見ると三千五百円だった。
めぐみの家がいくら大塚駅から遠くても五千円あれば足りるだろう。
あまりに高額な金額をポンと渡されても困ると思い、悠也はタクシーの運転手に五千円札を手渡した。
「自分で払えるから」
自分の財布を取り出して、困ったような表情を浮かべるめぐみに「別にいいよ」と断った。そもそも彼女に支払いなどさせる気など毛頭なかった。
「あと、これ。なんかあったら連絡して」
悠也は自分の連絡先が書かれた名刺を手渡した。
彼女が番号を消していなければ連絡することは可能だろうが、この様子では消されてしまっている可能性もゼロではない。
どうにかこのチャンスにしがみつきたかった。
「……うん」
今度は断ることなく、彼女は受け取った。
めぐみを乗せたタクシーは、扉を閉めて走り出す。
もしかしたら連絡は来ないかもしれない。
雨粒が、悠也のことを包み込む。
気分はなぜだか満ち足りていた。
「慎吾。俺、間違ってないよな。きっと」