夏の花火があがる頃
第10話 全てが変わった日
 八月になった。

 結局あれからめぐみに会っていなかった。

 あの頃の思い出ばかりをなぞっているのは悠也ばかりだった。

 蝉の鳴き声が聞こえる。

 茹だるような暑い日々が続く。

 今年の夏の花火大会はもうすぐだった。

 この時期になると、さすがの萌も優しくなった。

「ゆっくり休める日は休んでね」

 そんなメッセージが届く。

 大学時代から付き合いのある人物は、悠也に対して腫れ物に触るかのように扱った。

 そんな気遣いを頭の片隅では分かっているものの、感謝の気持ちを持つ余裕などなかった。

 電車に乗っていると、あちらこちらに花火大会の広告が目立ってくる。

 めぐみは大丈夫なのだろうか。

 悠也ですら、こんなにも精神的に参っているのだから、めぐみはもっと参っているに違いない。

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