夏の花火があがる頃
頭がぼーっとする。
こめかみの奥が痛い。
その日は、自分の部屋にいた。
悠也は海外に出張しに行くとのことだった。
柏木といい、悠也といい、頭のいい男は海外に飛んでいく。
きっとめぐみはずっと日本にいるのだろうと思う。
変わることもしないまま、変われもしないままずっとこの国で生きて行く。
コンテストの締め切りが迫っていた。
簡単な課題だと思っていたが、幸せが分からない今、何を描けばいいのかすら分からない。
あんなに頑張ると豪語していたにも関わらず、行動を起こせていない。
大きなため息をついて、汚い部屋の中を眺めた。
片付ける気力も起きない。
あんなに気を使っていた料理ですら、する気は起きず、コンビニで買ってきた清涼飲料水を飲んでいるだけである。
締め切った窓の外から、蝉の鳴き声だけが聞こえてきた。
クーラーで冷えきった部屋の中では、蝉の声は季節外れのようだ。
動ける気がしなくて、めぐみはベッドの中にもぐりこんだ。
瞳を閉じてしまえば楽だった。
考えなくてはいけないことから、目を逸らしている時間は、ホッとする。
悠也の隣も、めぐみにとってはそんな場所だった。
安心するし、目を逸らしていられる。
だが、いつまでも悠也の隣に止まってはいられない。
現実に帰らなければならない時は必ず来るのだ。
こんな時、母親に相談することが出来たら、どんなにいいだろう。
幼い頃から悩むとそんな妄想をした。
無駄だとわかっていてもせずにはいられなかった。
だから母に縋りたいときは鏡を見る。
あの頃、めぐみの手を引いて夏祭りに連れて行ってくれた母と、めぐみは同い年だ。
「……」
鏡の中の母は、ひどくやつれた表情を浮かべていた。
こめかみの奥が痛い。
その日は、自分の部屋にいた。
悠也は海外に出張しに行くとのことだった。
柏木といい、悠也といい、頭のいい男は海外に飛んでいく。
きっとめぐみはずっと日本にいるのだろうと思う。
変わることもしないまま、変われもしないままずっとこの国で生きて行く。
コンテストの締め切りが迫っていた。
簡単な課題だと思っていたが、幸せが分からない今、何を描けばいいのかすら分からない。
あんなに頑張ると豪語していたにも関わらず、行動を起こせていない。
大きなため息をついて、汚い部屋の中を眺めた。
片付ける気力も起きない。
あんなに気を使っていた料理ですら、する気は起きず、コンビニで買ってきた清涼飲料水を飲んでいるだけである。
締め切った窓の外から、蝉の鳴き声だけが聞こえてきた。
クーラーで冷えきった部屋の中では、蝉の声は季節外れのようだ。
動ける気がしなくて、めぐみはベッドの中にもぐりこんだ。
瞳を閉じてしまえば楽だった。
考えなくてはいけないことから、目を逸らしている時間は、ホッとする。
悠也の隣も、めぐみにとってはそんな場所だった。
安心するし、目を逸らしていられる。
だが、いつまでも悠也の隣に止まってはいられない。
現実に帰らなければならない時は必ず来るのだ。
こんな時、母親に相談することが出来たら、どんなにいいだろう。
幼い頃から悩むとそんな妄想をした。
無駄だとわかっていてもせずにはいられなかった。
だから母に縋りたいときは鏡を見る。
あの頃、めぐみの手を引いて夏祭りに連れて行ってくれた母と、めぐみは同い年だ。
「……」
鏡の中の母は、ひどくやつれた表情を浮かべていた。