闇夜に咲く芍薬のように
「そうしたら輿に乗り込む際に羅陽様が見えて…。」
そこで言葉を止めた彼女は、やっと羅陽さんの腕に抱かれている私に気づいたらしい
「まぁ、どなたですの?」
羅陽さんは彼女の言葉に、長い着物の袖で私の顔を覆った。
「これは失礼。
この者は私の恋人でして、この関係はまだ内密にしておりますので、お顔は伏せさせていただきます。
彼女は怪我をしているので、そろそろ失礼致します。」
早口でそう言った彼は、軽く礼をとった後、再び歩みを進めた。