闇夜に咲く芍薬のように
「旦那様は奥にいらっしゃいます。」
夢華はそう言うと、礼をして下がってしまった。
ーー勝手に入っていいのかな…。
そんなことを思いつつも、この場で突っ立っているわけにもいかず、堂屋に足を踏み入れる。
流石この屋敷の主屋。
天井も高く、窓や襖、梁の細部の装飾まで完璧な美しさだ。
続きになっている部屋を二つ進んだところで、書斎のような部屋に辿り着き、その奥の卓で書き物をしている羅陽を見つけた。
「羅陽!」
そう声をかけると、彼は瞳を上げた。
黒曜石のような綺麗な瞳と目が合い、頬を染める。