お前なんか!!~世間知らずなお嬢さまは執事を所望する~
岬の通う高校は、岬の出身中学からの進学率が高い。だから知った顔も多いし、クラスには直ぐ溶け込めた。
「岬くん、また一年一緒だね。よろしくね」
そう言って声を掛けてくる生徒の多いこと多いこと。女子が主だが、男子もそこそこ居る。岬は中学で男女分け隔てなく接していたので、男女どちらにもおおむね好感を持たれていた。
ホームルームでは明日からのオリエンテーションについての説明があっただけで今日は解散になった。暫くざわざわとクラスの中がざわめいている中、廊下の扉から岬を呼ぶ声がした。
「安藤、お呼び出しだぞ」
そう言われて振り向くと、其処には彩乃が立っていた。彩乃は岬が自分を見たと分かると、嬉しそうに教室に入ってきた。……中学三年間で培ってきた地位を、彩乃の所為で全て地に落とすことになるのか……。そう思うと歯ぎしりしてしまう。
「岬くん? 帰りましょ」
彩乃が帰りを催促するので行かないわけにはいかない。周囲の生徒に、じゃあね、と挨拶をして、彩乃と連れ立って教室を出る。
送迎の車もない、設備もぼろぼろ、学食なんて当たり前になくて、グラウンドも一つだけ。制服だってあのエスカレーター式の高校ならデザイナーズブランドの制服が着れただろうに、こんな普通のブレザーの制服で何が楽しいのか、彩乃は機嫌が良かった。
昇降口を潜って校舎の外へ。そこで岬は口を開いた。