お前なんか!!~世間知らずなお嬢さまは執事を所望する~
「だって、登下校一緒だし、お弁当の中身が宮田さんと岬くんで一緒のことが多いって言う噂だよ?」
弁当は宮田家のシェフが作って持たせてくれるものだから、入れ物と包みは違うけど、中身は一緒になってしまうだろう。しかし、登下校は兎も角、弁当の中身まで見られているとは思わなかった。
「違うよ、それは誤解だ。そもそも俺、彩乃さんの事、何とも思ってないし」
きっぱりと言うと、岬を取り囲んでいる女子たちから安堵の息が漏れる。
「そっかあ、良かった」
「そうよね。宮田さんが相手だと、勝ち目がないもんね」
岬を取り囲んだ女子からは安堵の言葉が漏れた。
(ああ、これだよ……! 俺を取り囲む人間は、こうじゃなくっちゃ……っ!!)
一人満足していた岬の耳に、今から帰ろうとしていたクラスメイトからの声が掛かる。
「あっ、今日も来てんじゃん。おーい、安藤。宮田さん来てるぞ」
呼ばれて気が付いた。もうそんな時間だったのか。
周りを囲んでた女の子たちに、またねと声を掛けて、彩乃のところへ行く。すると、心持ち気落ちしたような彩乃が其処に居た。
「どうかしましたか、彩乃さん」
俯いた顔を覗き込むようにして言うと、彩乃はびくっとして岬を見て、それから視線をうろうろと彷徨わせてから、なんでもないの、と元気なく言った。
(どうでもいいことで心配する振りなんかさせんなよ! お前なんか、本当だったら箸にも棒にも掛からないんだからな!!)
居丈高に内心思う。そんな岬の隣を、彩乃は悲しそうに目を伏せて歩いて行った。