お前なんか!!~世間知らずなお嬢さまは執事を所望する~
「おい、お前。僕は偉いんだぞ。僕の言うことを聞かないお前なんか要らないんだぞ」
「しっ! お母さん猫がおびえちゃう!」
岬の気分を損ねたと知ったら、子供たちはみんな即座に謝って来た。ところがこの女の子はそんな素振りを全く見せない。なんて立場の分かってない子供だろうと思ったら、女の子が見つめる視線の先に、黒い猫と、それから子猫が三匹、蹲っていた。
「……赤ちゃん、生まれたてなのね……。ちっちゃい……、かわいい……」
ぽうっと猫の母子を見る女の子は全く岬に興味を示さない。腹立たしいことこの上なかった。岬はこの女の子の父親も頭を下げる王様なのに。
「おい、お前。僕のことを知らんふりするとはいい度胸だな」
岬が女の子を脅しても、女の子には響かなかった。
「ねえ! この子たち、岬くんのおうちで飼ってもらえる? 本当は私が連れて帰りたいけどおじいちゃんが猫アレルギーなの……」
女の子はそう言ってしょんぼりと眉を寄せた。
なんだって、王様の岬がこんな言うことを聞かない子供の言うことを聞かなきゃならないのか。しかし、小屋の奥でひと固まりに丸まっている猫たちはとてもかわいかった。岬は自分付きの執事である長谷川を呼ぶと、彼に猫たちの寝床を作るよう命じた。