Livre magic〜好きな人の大切な人〜
僕たちが動くより、物の怪が動く方が早かった。

物の怪が手の平を僕に向ける。刹那、その手から猛吹雪が出されていき、僕の小さめの体はあっという間に吹き飛ばされてしまった。

「ノワール!」

カズが僕の手を掴もうとしたけど、その手は虚しく空を切っただけだった。僕は思い切り壁に体を打ち付けてしまう。

どうやら頭も打って脳震盪を起こしたみたいだ。ズルズルと地面に力なく倒れた僕の視界が、暗闇に染まっていく。

「ノワール!」

「しっかりしろ!」

全員の声を聞きながら、僕は完全に意識を失ってしまった。



ただ、真っ暗な空間を歩いていた。ぼんやりとした意識の中、これは僕が見ている夢なのだとわかる。明晰夢というやつだろうか?

でも、仮に明晰夢なら変だ。これは僕の望む夢ではない。明晰夢なら自由に夢を操れるはず。僕は今、操り人形のようにただ暗い空間を歩いているだけだ。

すると、突然僕の目の前が真っ白な光に包まれた。まるで、本の世界を行き来する時みたいだ。眩しくて目を閉じる。
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