記念日はいつもバレンタイン
「また、ここ間違ごうとるで」
「えっ、ほんまや」

 この2、3日、勉強にまったく身が入らない。
 大学卒業前の忙しい中、時間を作って来てくれているのに悪いとは思いつつも、自分で自分が抑えられない。

 とうとう俊兄ちゃんにこつんと頭を叩かれた。
「おい、しっかりしいや。こんなんじゃ、おれも安心して東京行けへん……」
 その言葉にカチンと来て、わたしは思わず声を荒げた。
「そんなん関係ないやん、うちがしっかりしててもしてなくても、どうせ俊兄ちゃんは東京行くんやし!」
 感情を爆発させて、それからわたしは机に突っ伏した。

 俊兄ちゃんはわたしの剣幕に面くらい、しばらく黙っていた。
 そして、冷静な声で尋ねてきた。
「なんかあったんか? 友達と喧嘩したとか」
 ああ、こんなことしたら、ますます俊兄ちゃんにアホやと思われるのに……

 わたしは突っ伏したままの姿勢で
「俊兄ちゃん、ごめん。今日はもう帰って。明日からはちゃんとするから」

 俊兄ちゃんはまだ何か言いたげだったけど、わたしが態度を変えそうにないと思ったらしく、明日、また来るわと言って、部屋を出ていった。
 もう、優奈のアホ。
 八つ当たりしたところで、どうにもならんのに。
 でも、わたしにはこのイライラを治める術が、どうしてもわからへんかった。
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