上手な失恋の立ち直り方
葉月の失恋
思い出にバイバイ
ああ、失恋ってこんなにもつらいものだったのだろうか。奄美 葉月はこれ以上ない大きな溜息をついて、見るに堪えない惨めな自分を嘲った。見るに堪えないとはこの顔のために用意された言葉なのだろうか。涙で星空がくすんで折角の満月も雲がかかったような朧月に見えてしまう。
最愛の彼───いや、最愛だった彼は最後に一言だけ別れようと呟いて去っていった。葉月を心配するような言葉もなく、他の人が幸せにしてくれるよだなんて綺麗事さえもなく、ただ一緒にいられないと言う事実だけを突き付けて去った。
きっと、どこが悪かったのかだとか、何が気に食わなかったのかだとか、そんなことを考えたところで彼が帰ってくることはない。どれだけ自分に磨きをかけて、お洒落な服を着ても、新しいメイクに変えてみても、見向きもしないどころか虚栄心だけが残って虚しくなるだけだ。
「寄り道みたいな始まりが・・・・・・」
今となっては懐メロと呼ばれることとなったシャ乱Qのシングルベッドを歌ってみる。何と今の彼女に合った歌だろうか。一昔前の曲は人の心を叙情的に書き連ねていて、何と言うか胸に刺さる。
「やだな。湿っぽくなっちゃう」
葉月はそう呟くと唇を噛んだ。少しでも痛みで涙を紛らわせれば。いや、違う。泣いているのが痛みのせいだとでも思いたいのだろう。
先程まで葉月を見下ろしていた月はどんよりと黒ずんだ雲の隙間に顔を隠して、もう時期雨が降ることを告げている。当の葉月はそんなこと気にする素振りもなく、ただただ感傷に浸る。
こう言う時、人は嫌と言うほど卑屈になる。昔から自分は情けない人間だったな。人の気持ちを汲んであげられない人間だったな。また失敗して、次も失敗して、その次も更に次も同じ失敗を繰り返してはこんな物思いに耽るんだろうな。
「嫌だな、もう。明日、会社休もうかな」
とでも言ってみる。けれど、納期が近いため人が一人休むだけで手付かずの仕事が山ほど増えてしまうのだろう。そんな心配が出来る程度には葉月の頭には少しの余裕があるのだろうか。
「ゆっちゃん、びっくりするだろうな。すっごく応援してくれてたのに」
きっとここまで悲しいのは彼だけでなく、同期の優希さえも裏切る形になってしまったからなのかも知れない。そうでなくとも、彼女の期待を裏切る形で終わったしょうもない恋だったことに違いはない。
重たい足取りで帰宅することを決めた葉月の頭上からぽたぽたと雫が落ち始める。遂に雨が降り始めてしまったようだ。けれど、こんな気持ちの時くらいびしょ濡れで帰ってもいいだろう。心がびしょ濡れなら、帰って清々しい気持ちになれるかも知れない。涙も隠せて丁度いいじゃないか。
葉月が家に帰る頃にはコートもスカートも徹底的に雨が染み込んで、その湿気は下着まで到達してしまっていた。まるで彼女の胸の内でも表すかのように雨は翌朝まで続いた。
最愛の彼───いや、最愛だった彼は最後に一言だけ別れようと呟いて去っていった。葉月を心配するような言葉もなく、他の人が幸せにしてくれるよだなんて綺麗事さえもなく、ただ一緒にいられないと言う事実だけを突き付けて去った。
きっと、どこが悪かったのかだとか、何が気に食わなかったのかだとか、そんなことを考えたところで彼が帰ってくることはない。どれだけ自分に磨きをかけて、お洒落な服を着ても、新しいメイクに変えてみても、見向きもしないどころか虚栄心だけが残って虚しくなるだけだ。
「寄り道みたいな始まりが・・・・・・」
今となっては懐メロと呼ばれることとなったシャ乱Qのシングルベッドを歌ってみる。何と今の彼女に合った歌だろうか。一昔前の曲は人の心を叙情的に書き連ねていて、何と言うか胸に刺さる。
「やだな。湿っぽくなっちゃう」
葉月はそう呟くと唇を噛んだ。少しでも痛みで涙を紛らわせれば。いや、違う。泣いているのが痛みのせいだとでも思いたいのだろう。
先程まで葉月を見下ろしていた月はどんよりと黒ずんだ雲の隙間に顔を隠して、もう時期雨が降ることを告げている。当の葉月はそんなこと気にする素振りもなく、ただただ感傷に浸る。
こう言う時、人は嫌と言うほど卑屈になる。昔から自分は情けない人間だったな。人の気持ちを汲んであげられない人間だったな。また失敗して、次も失敗して、その次も更に次も同じ失敗を繰り返してはこんな物思いに耽るんだろうな。
「嫌だな、もう。明日、会社休もうかな」
とでも言ってみる。けれど、納期が近いため人が一人休むだけで手付かずの仕事が山ほど増えてしまうのだろう。そんな心配が出来る程度には葉月の頭には少しの余裕があるのだろうか。
「ゆっちゃん、びっくりするだろうな。すっごく応援してくれてたのに」
きっとここまで悲しいのは彼だけでなく、同期の優希さえも裏切る形になってしまったからなのかも知れない。そうでなくとも、彼女の期待を裏切る形で終わったしょうもない恋だったことに違いはない。
重たい足取りで帰宅することを決めた葉月の頭上からぽたぽたと雫が落ち始める。遂に雨が降り始めてしまったようだ。けれど、こんな気持ちの時くらいびしょ濡れで帰ってもいいだろう。心がびしょ濡れなら、帰って清々しい気持ちになれるかも知れない。涙も隠せて丁度いいじゃないか。
葉月が家に帰る頃にはコートもスカートも徹底的に雨が染み込んで、その湿気は下着まで到達してしまっていた。まるで彼女の胸の内でも表すかのように雨は翌朝まで続いた。