白き髪のガーネット【改訂版】
「……そっか。
今日はクー兄様、お城に行ってるんだよね……」
思い出して呟く。
クー兄様は王子様。
第三王子と言っても、実はこの炎の国の次期国王になるかも知れない人。
現在は国王様に続き第一王子様が跡取り候補だけど、元々お身体が弱くお子様にも恵まれなくて将来が不安定。
第二王子様はご正室様との御子ではなく、側室との間に産まれた為に身分が低いと聞いた。
その中でクー兄様はご正室様の御子で身分も申し分なく、炎の力を引き出すのにもっとも優れた能力を持つ人物ー炎の神子ー。
炎の国のみんなにも、他国の人達にも、次期国王はクー兄様だと一目置かれている。
現国王様もクー兄様を認めて、第一王子様よりも頼りにしているって噂だ。
そんなクー兄様はとても大切にされていて、今日はお城で盛大な誕生日パーティーが開かれている。
他国のお偉いさんもたくさん来る席。
そう簡単には、帰って来られないよね。
だって主役なんだもん。
頭では解っている。けど、面白くない。
思わず頬をプクッと膨らましてしまう。
クー兄様。
あの優しい笑顔が、大きくて暖かい手が、私だけのものだったらいいのに……。
膝を抱えるようにしてお花を見つめていると、気持ちを察したようにメルがそっと頭を撫でて微笑んでくれた。
「そろそろお昼ご飯の時間です。
お部屋に戻りましょう?」
「!……ご飯?うんっ!!」
ご飯、と聞いて単純な私はパッと笑顔になると勢い良く立ち上がり、「早く!早く!」とメルの手を引っ張るようにして建物の中に入った。
ーーそう。この時、私は単純な子供だった。
自分の気持ちに深く悩む事もなく、ただ我が儘を素直に口に出来る年頃だった。
「えっ?!それは本当ですのっ?」
「クウォン様と雷の国のお姫様がご結婚っ?!」
部屋に戻る途中の廊下。
立ち話をしていた侍女達の声が聞こえて、私は思わず足を止める。