白き髪のガーネット【改訂版】
***

自分の部屋のベッドに閉じ籠って、もうどれ位時間が過ぎたのだろう?
掛け布団を頭まで被ってずっと暗闇の中に居るから外の様子は分からないけど、多分もう夜だ。
でも、お腹の虫も鳴かない。
代わりにいつもはお腹にいる虫が胸に移動したかのようにモヤモヤする。
いつもならこうして布団に包まっていれば自然に眠ってしまう事もあるのに眠れない。

すると、ガチャッと部屋の扉が開く気配。
聴きなれた足音が近付いてきて、隠れるように掛け布団の中に包まる私のベッドの脇に座った。

「……ガーネット、ただいま。
今日はおかえりって出迎えてくれないのか?」

包まった布団の外から聞こえる声。
その大好きな声に、顔を見なくてもすぐに誰だか分かる。

「メルに聞いた。
お昼から何も食べずに部屋に籠っているんだって?……全く、何を拗ねているんだ?」

「……」

「それとも、何処か身体の具合でも悪いのか?」

「クー兄様のせいですっ!!」

問い掛けながら掛け布団越しに私の頭を撫でるクー兄様に、思わずそう叫んだ。


「え?……ああ、ごめん。帰りが遅くなったな」

「私はそんな事で怒っている訳ではありませんっ……!!」

帰りが遅い。
確かに、それも寂しかった。

でも、違う。
私の不機嫌の本当の理由に気付かない鈍ちんのクー兄様。

「……じゃあ、なに?
俺のガーネットは何をそんなに拗ねてるのかな?」

「!っ……きゃあッ」

あっという間に包まっていた布団を剥がされて驚き戸惑う私を、クー兄様はガバッと捕まえるようにその逞しい腕の中に抱き締める。

フワッと香るいい匂い。
大好きな落ち着くクー兄様の匂いに、不機嫌だった気持ちが惑わされそうだ。

「……言って?何を怒ってるの?」

優しい声。
いつもならこんな風にクー兄様に優しくされたら、簡単に許してしまう。

……でも、誤魔化されたくない。
このモヤモヤは、なかった事にしたくない。
私はクー兄様の胸に顔を埋めたまま、ゆっくり口を開く。

「……雷の国のお姫様と、結婚するの?」

「!……え?
……あ、ああ。まぁ、確かにそんな話はあるけど……」

耳を疑う。
ズキッと痛む胸。
< 13 / 87 >

この作品をシェア

pagetop