白き髪のガーネット【改訂版】
「……。うん。
綺麗な人、だったよ。とても……」
恥ずかしくて顔を伏せていた私の問い掛けに答える、クー兄様の声が聞こえた。
その少し悲しそうな、懐かしむような声に顔を上げてみると……。クー兄様は切ない瞳で、でも微笑んで、少しだけ頬が赤かった。
「優しいのに強くて……。素敵な人だった」
「っ……」
ズキッと痛む胸。
母様の事を想って語るクー兄様を見て、一瞬で自分の熱が冷めるのを感じた。
墓穴を、掘った。
なんで、母様の事なんて話題にしたんだろう?
何故、気付いてしまったんだろう。
クー兄様は、きっと母様の事がーー……。
身体は時が止まったようなのに、頭の中だけは色んな思いが渦巻く。
もしかして私を引き取ったのも、傍に置いてくれるのも……。私が、母様に似ているから?
母様の身代わりなの?私は……。
そんな考えが溢れそうになった時。
「ーーお寛ぎのところ、申し訳ございませんっ!」
馬が駆けてくる足音と共にアルトさんの声が近くで聞こえて、私はハッと我に返った。
「クウォン様、王がお呼びです。
至急、城にお向かい下さい」
「……やれやれ。
せっかく帰って来たのに、息つく暇もないな」
アルトさんの伝令にクー兄様は溜め息を吐くと、私の頭をポンポンッと撫でて微笑む。
「せっかくゆっくりデートしようと思ったのに、ごめんな?
……アルト、悪い。俺はこのまま城に向かうからガーネットを離宮まで頼む」
「はっ、かしこまりました」
アルトさんのハキハキとした返事を聞くとクー兄様は黒雲に跨って、あっという間に私達の前から去って行った。
……
…………。