白き髪のガーネット【改訂版】
水の国王様の青い瞳と自分の瞳が重なったら、まるで時が止まったように固まってしまった。
”会った事がある”
”私はこの人を知っている”ーー。
そんな気持ちが溢れて、心臓がトクンッと暖かい鼓動を立て始めた。
すると、…………。
「っ……アクア?
お前……まさか、っ……アクア、なのかっ?」
茫然としている私に、水の国王様が目を見開いて問い掛ける。
”アクア”ーー?
何故だか懐かしく感じるその名前。
心臓がどんどん早くなり、身体が……。心が熱くなってくる。
そして私の頭の中に次々と……。まるで絵本でも読んでいるかのように、幼い日の思い出が浮かんでくる。
私を”アクア”と呼ぶ青い髪と青い瞳の男の子には、水の国王様の面影がある。
私は彼を、いつも追いかけていた。
彼が剣の稽古をすると言えば「私もやる!」とまとわりつき。
乗馬の稽古をしていれば「私も乗る!」と駄々を捏ねた。
お転婆で我が儘な私を、その度に優しく「仕方ないなぁ~」ってなだめてくれる、男の子。
……貴方は?
……、っ……貴方、は……、……。
「ーーっ。……ヨシュア、兄様っ?」
その名前を口にしたら、私の瞳から熱い涙が溢れてポタポタと地面に落ちる。
私が名を呼ぶとヨシュア兄様は椅子から立ち上がり、駆け寄ってきて力強く抱き締めてくれた。
何故?
何故、忘れていたんだろう……?
大好きな大好きな、優しいたった一人の実の兄。
よく分からないけど、戸惑いよりも再会出来た喜びの方が強くて腕の中で笑顔になる私。
……けれど。
ヨシュア兄様の言葉が、私を凍りつかせる。
「っ……よく、無事だったな。
10年前の戦に巻き込まれて、父上と母上と一緒にっ……。もう生きていないかと……ッ」
「!!……、っ……え?」
再び時が止まったように、私は動けなくなった。