白き髪のガーネット【改訂版】
真っ赤な戦場。
私の瞳に映るのは……。
戦い合う、二人の男性の、一騎討ち。
青い髪の男性の剣が、紅い髪の男性の左肩を貫くの。
”父様の勝ちーー!!”
と、ホッと胸を撫で下ろした瞬間。
左肩を貫かれた男性が、倒れずに……。眩い紅い光に包まれたかと思うと、その光は炎になって、激しくあっという間に父様の事を巻き込んでいった。
呼吸も忘れて見ていたら……。
炎が徐々に消えていって、空のように青かった父様は真っ黒な姿になっちゃって、風が吹いたら、まるで落ち葉みたいにハラハラと舞っていった。
そしてその側で、立っていたのはーー?
父様に貫かれた肩を押さえながら、血で染まり更に真っ赤になった男性。
紅い夕陽のような色の、髪と瞳の男性。
……その人は?
……その、人はーー?
私の頭に浮かぶ、愛おしい人の姿。
ハッキリと、思い出した。
”クウォン”と、心の中で叫んだ直後。
建物の外がワアァァーッと騒がしくなり、私の側にいたヨシュア兄様が立ち上がる。
「何事だッ?」
「ヨシュア様、敵襲です!!
炎の軍がこの砦を取り囲んでおりますッ……!!」
ヨシュア兄様に伝令に来た兵士の声が、私の耳に入ってくる。
炎の軍が、攻めてきたーー?
……嘘。
だって、クウォンは和平を結ぶって……。
戦いを止めるって、終わらせるって……言った。
色んな事が、予想外の事が一気に起こりすぎて動けない。
「っ……10年前と同じじゃないか!!
分かっただろう?アクア!クウォン王子はこういう男だッ!!
我々を油断させて、平気で騙し討ちする男なんだっ!!」
地面に力なく座り込んだままでいる私に、ヨシュア兄様が怒鳴ってる。
「っ……可哀想に。騙されて、無理矢理に側室にされたんだろう?
だが、もう大丈夫だ。必ず兄様が守ってやる……!!」
そう言ってヨシュア兄様は私の事をその場にいる兵士達に任せると、側近を連れて勢い良く部屋を出て行った。