白き髪のガーネット【改訂版】
第6章
慌ただしく騒がしい戦場と化した水の軍の砦。
辺りには火が放たれ、建物の一部が燃えている。
敵か味方か分からない、倒れた人。怪我をして騒いでいる人々。
「っ……!」
10年前と良く似たその光景に、私に思い出せと言わんばかりに頭痛が襲ってくる。フラッシュバックして、何度も何度も頭に浮かぶ赤い悲しい記憶。
クウォンを信じたい。
信じたいのに、記憶が私に訴える。
”両親を殺したのは、あの男だ!”
”仇を討つんだッ!!”と、言わんばかりに鮮明にあの日の事を私に思い出させる。
悲鳴も、叫び声も……。
鼓膜に貼り付いているように、消えない。
「っ……クウォン……ッ」
確かに、この記憶は消せない事実。
現実に起きた事、なんだと思う。
ーーでも、嘘じゃない。
クウォンが私を愛して、大切にしてくれていた気持ちは、絶対に嘘なんかじゃないーー!!
会いたくて、会いたくて、私は頭痛を堪えながら戦場を駆け回る。
その時……。
「ーーおいっ!お前ッ!!
こいつ、炎の国が送ってきた使者の女じゃないかっ?」
「!……本当だッ。炎の王子の側室の女だッ!!」
私の本当の正体が、水の国の姫だと知らない兵士達に辺りを取り囲まれてしまった。武器を構え、私にジリジリと歩み寄ってくる。
戦のせいで殺気立っていて、私の話を聞いてもらえそうにも、信じてもらえそうにもない。
自力で突破するしかない、と覚悟を決め、私が腰に差している剣に手を伸ばした。
まさにその瞬間。
私の頭上にフッと黒い影が通ったと思うと、その黒い影は目の前に居た兵士達の背後に舞い降りた。
兵士達は悲鳴を上げ、バタバタと地面に倒れていく。
!……まさか、っ…………。
辺りに舞っていた砂埃が風に吹かれて、兵士達を一気に倒した人物が姿を現わす。