白き髪のガーネット【改訂版】

水の国は本来、男性よりも女性に強い魔力が受け継がれていく。
大体は直系の第一子が力を受け継ぐが、水の国に宿ると言われる水神様が現代で選んだのは私。

他の国にも、当然神様がいる。
勿論、炎の国にも……。
今はゼアス様が持っているその力は、いずれ炎の国で誰よりも優れた魔力を持つ第三王子に……。クウォンに、受け継がれる事になる。

水の国と炎の国は、敵同士。
私と、クウォンは……。

共に互いの国の守護神に選ばれた、神子ーー。

炎神の力をクウォンが手に入れれば、間違いなく私達を脅かす存在になる。
まだ、神の力を持っていない今なら……。私は彼を、倒す事が出来る。

私ならクウォンを、倒す事が出来るーー?

ザワッと震える、心。
ギュッと拳を握り締めて目を合わせると、地面に片膝をついていたクウォンがゆっくりと立ち上がり私を見つめ返す。
その隣には、アルトさんとメル。背後には、炎の軍勢。

昨日、まで……。つい今朝まで、私達は味方だった。
まるで家族のように、私に優しくしてくれた炎のみんなが……遠い。


「……水の神子が力を手にしました。
クウォン様、ここは危険です」

アルトさんがクウォンを守るように傍で剣を構えて、私を睨むように見つめてくる。メル、も……。
私や水の軍が少しでもクウォンに近付けば、きっと……。

「ーー炎の王子を、討つチャンスです」

ヨシュア兄様の側にずっと居た、大柄な男性が私に言う。
黒髪に黒い瞳の男性。幼い頃の私の記憶に、微かにあるこの人はグラン将軍。
父様の片腕だった、水の国腹心の部下だ。

「アクア姫。
今こそ、10年前の借りを……。ご両親の無念を晴らす時です」

グラン将軍の言葉に、背後に控えている水の兵士達は「そうだ!そうだ!」と歓声を上げる。

みんなが、私に、期待していた。
< 49 / 87 >

この作品をシェア

pagetop