白き髪のガーネット【改訂版】
あのまま何事もなく……。10年前の事件がなく、この城で育ってた方が幸せだったのかーー?
父様や母様を失った悲しみは勿論辛いけど、
私はこの10年。幸せだったのだから……。
たくさん可愛がってもらった、とても大切にしてもらった。
炎の国で生きたあの時間を、全てなかった事になんて出来ない。
「っ……戦いたく、ないよっ」
首に掛けているペンダントの宝石を、私はギュッと握り締めながら中庭で夜空を見上げた。
クウォン。
例え貴方が私を愛していなくても……。
貴方がくれた時間が、偽りの時間だったとしても……。
私がクウォンを愛した気持ちは、嘘じゃない。
この気持ちだけは、消せないーー。
クウォンを想って目を閉じた時、私の頭の中にある言葉が響いた。
『ガーネットの石にはね。
もう一つ、意味があるんだ』……。
それは、私が水の砦へ発つ朝。彼が私に言った言葉。
もう一つの、意味ーー。
それは不意に思い浮かんだ事だったけれど、私は気になって気になって仕方がなくなった。
「っ……!」
中庭を駆け出し、私はある場所を目指した。
それは、地下の隠し部屋。
昔、両親が宝物だと言って見せてくれた。
真実を教えてくれる、鏡。
水の国の秘宝”水面鏡”。
水神の力を得た者だけが扱える、真実を映す鏡。強い想いや願いがあれば、その者が知りたい全てを見せてくれる。って……。
今の私に扱える代物かは分からない。
けど、一か八かやってみたい。
このまま何もせず、何も知らずにクウォンと戦うなんて、私には出来なかった。
……
…………。