白き髪のガーネット【改訂版】

アルト。
気付いた時には、毎日のように側にいた。
兄弟のように、親友のように……。でも、しっかり者で主従関係は決して崩さない真面目な男。
俺が父上に細やかな抵抗で離宮を建て、自分の部隊を一から作ると言った時も……。父上の下にいればもっと高い位を目指せたのに、迷わず俺に付いてきてくれた。

「……メル。俺が帰らない場合は、お前に託してきた物を全てみんなに分け与えてほしい」

「!……」

俺の言葉の意味に気付いたメルが目を見開く。

メル。
アルトと一緒に俺の側に居てくれた。
同じ歳なのにしっかり者で、いつも姉のように叱り飛ばしてくれた。
俺がガーネットを連れて帰って来た時も、何も言わずに……。女の子の扱いに疎い俺に代わって世話役を買って出てくれた。

俺はそんな彼女に、自分の万が一があった時の為に財産の全てを託していた。
俺がいなくなっても、みんなが困らないように。迷わず、自分の里へみんなが帰れるように……。
幸せな未来を、歩けるように祈ってる。

「……今日まで、ありがとう。
俺の我が儘な、儚い夢を一緒に見てくれて」

俺は隊長達を始め、各隊の一人一人の顔を見るように見渡して微笑んだ。

「叶えられなくて、ごめん。やっぱり俺には、統率する力も、国を治める力も……ない。
たった1人の女性さえ幸せに出来ない、男だった」

みんな、俺とガーネットを見守ってくれた。
彼女の正体を知りながらも俺の妹として、そして妻として扱ってくれた。

俺とガーネットが言い合っていれば「まあまあ」となだめてくれて、俺とガーネットが笑っていれば微笑ましそうに、みんなも笑ってくれた。

巻き込みたくない。
もう、これ以上。
俺の叶わない夢に付き合わせてはいけない。
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