白き髪のガーネット【改訂版】
「……だから、もう自分を責めないで?
貴方は10年間、充分苦しんだわ」
ガーネットが両手で、俺の両頬を包むようにして見上げる。
「護ってくれて、ありがとう。
大切にしてくれて、ありがとう。
……今度は、私が貴方を幸せにする」
ガーネットが背伸びをして俺にそっと口付けると、眩しいくらいに美しく、微笑った。
「私を、クウォンのお嫁さんにして?
ずっとずっと……一緒にいるからっ!」
飛び付かれた瞬間。
もう、何も考えられなかった。
俺の意思とか、この場の状況も関係なく……。溢れ出す涙が止まらなくて、俺はただ必死に愛おしい温もりを抱き締めていた。
恋も、夢も、叶わないと思っていた。
……けど。
「愛してるわ、クウォン」
「っ……ああ。
俺も、愛してる」
少し勇気を出せば、歩み出せる。
どんなに弱くても、必ずいつか実るのだと、大切な人が教えてくれた。
……
………しかし、…………。
「ーーふざけるなッ!裏切り者ッ……!!」
静まり返っていた戦場に、怒鳴り声が響いた。
「10年前、俺の父ちゃんは炎の軍に殺されたんだぞッ!!」
「っ……そうだッ!!炎の軍のせいで俺らがどれだけ苦しんだと思ってるんだッ……!!」
水の軍の兵士達が「そうだ!そうだ!」と、怒りの声を上げる。
……当然の、事だ。
ノクテ様が俺を恨んでいないにしても、水の国の民が炎の国によって奪われた命や、人生を狂わされたのは消せない事実。
民衆達が簡単に納得する筈がない。
ガーネットの兄のヨシュア王も、グラン将軍も、この兵士達の騒ぎを抑える事は無理だ。
俺がそう思った時。
「何が水の神子だッ!!
炎の王子の女なら一緒に殺ってしまえッ……!!」
水の軍の弓部隊が、俺とガーネットが立つ中央を目掛けて一斉に無数の矢を放つ。